2008年12月16日(火)「しんぶん赤旗」

自動車産業 ドイツでは

操業短縮で雇用維持

政府が手当 給与90%保障


 世界的な景気後退のなかでドイツ自動車産業も十一月の新車売り上げが昨年同時期比18%減となっていますが、労働者の雇用は守られ、賃金の90%が保障される操業短縮を行う企業が目立っています。

 ドイツ公共テレビZDFは十一日、独自動車大手ダイムラーがメルセデス・ベンツなど高級車の組み立てやエンジン製造を行う複数の工場での操業短縮を決定したと報じました。関連労働者は三万五千人で、一月十二日から少なくとも数カ月、勤務体制が週三日ないし四日となり、交代制でなく、昼勤務だけになります。

 労働者の賃金は減りますが、政府が導入した操業短縮手当で通常給与の約90%が保障されます。ZDFによると、手取りで二千ユーロ(約二十四万円)の平均的な労働者の場合、保障される賃金は千八百ユーロ。

 別の自動車大手フォルクスワーゲン社やアウディも操業短縮を実施します。

 ドイツ政府は十一月中旬、労働者の雇用を守るために、操業短縮手当支給期間を従来の一年間から一年半へ延長しました。二〇〇九年末までに操業短縮に入った工場の労働者が対象になります。

なぜ日本と違う?

背景に厳しい解雇制限

 欧州で日本のように期間工や派遣労働者の解雇が行われないのには、厳しい解雇制限が背景にあります。

 ドイツでは「解雇制限法」で集団的解雇が厳しく規制されています。一定規模を超える解雇は当局の同意が必要です。会社側は、労働者代表組織である事業所評議会に解雇の理由を説明し、意見を聴取、会社側と事業所評議会双方が、労働者の将来の不利益を緩和する「社会計画」を取り決める必要があります。

 この「社会計画」には解雇一時金の支払いや労働者が新たな仕事に就くための職業訓練などを含みます。

 解雇制限法以外にも産業ごとに労使間で締約される労働協約で、解雇の条件が定められます。派遣労働者も労組全国組織のドイツ労働総同盟(DGB)が労働者を代表して派遣会社と労働協約を締結しています。

 フランスでは、「経済的理由による解雇の防止と職業転換の権利に関する法律」で解雇を規制、被解雇者の職業転換を支援する措置がとられています。

 各国の国内法規とともに、欧州全体では欧州連合(EU)共通のルールがあります。大量解雇指令(一九七五年制定、九二年一部改正)は、労使の事前協議を義務づけ、二〇〇一年には、「欧州労使協議指令」を合意。多国籍企業が工場閉鎖や大量解雇をする場合、欧州規模の労使協議が義務づけられています。(片岡正明)



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