2008年12月9日(火)「しんぶん赤旗」
父・戦争・労働組合…
益川さん ノーベル賞の受賞講演でエピソード
ノーベル賞の受賞記念講演で、京都産業大学教授の益川敏英さんは、自らの生い立ちや労働組合での活動、受賞対象となった研究のアイデアを思いついたときのエピソードをまじえて話をしました。
講演は、父親が家具職人だったことから始まりました。父親が苦労しながら営んでいた家具工場が、「自国が引き起こした悲惨で無謀な戦争によって無に帰した」と、語りました。
電気技師を目指したこともある父親が知識を自慢しようと聞かせてくれた電気や天文の話が自然科学に興味をもったきっかけだったとものべました。
生まれ育った名古屋市にある名古屋大学の坂田研究室が素粒子のモデルを発表したことが大きく報道され、「自分の住む名古屋で物理がつくられている」と大きな感銘を受け、自分も加わりたいと思うようになったとのべました。
京都大学では労働組合の書記長として活動していたことにふれ、当時、秘書の解雇問題が起こっており、これを見過ごすことはできなかったと強調。午前中は共に受賞した小林誠氏との討論、午後は組合活動、夜は家での語らいの後自分の研究という忙しい日々が続いていたと語りました。
今回受賞対象となった理論を思いついたのは、家で入浴中だったことも紹介しました。
最後に、自分たちの理論が実験で確かめられるまでには、三十年に及ぶ多くの人々の努力があったと感謝のことばをのべ、講演をしめくくりました。