2008年12月9日(火)「しんぶん赤旗」

くらしなど最低基準見直し

地方分権委が第二次勧告


 政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は八日、国と地方の役割分担を改変することを求める第二次勧告を決定しました。勧告は同日、麻生太郎首相に提出されました。

 二次勧告は、国が住民のくらし、福祉、教育の最低基準を法律などで自治体に求めている「義務付け・枠付け」の大規模な見直しを提案。保育制度の最低基準の撤廃など四千七十六項目の廃止を打ち出しました。

 勧告では、国の出先機関の見直し案を示しました。地方への「権限移譲」を名目に、出先機関の業務を削減することで、現在の九機関を統合するなどして廃止するとしています。

 国土交通省地方整備局など六機関は、企画・立案部門を「地方振興局(仮称)」に、直轄公共事業の実施部門は「地方工務局(仮称)」にそれぞれ統合するとしています。

 厚生労働省関係では、中央労働委員会地方事務所を、本局に業務を移管し、廃止するとしています。

 勧告では、「本勧告の出先機関改革」は「将来の道州制への道筋における礎となるものと考えている」と明記。一次勧告にはなかった道州制への位置づけを強調しました。道州制論議を加速させる狙いです。

 政府は勧告を受けて、二〇〇八年度中に工程表となる計画を策定するとしています。


解説

住民福祉の後退招く

 地方分権改革推進委員会が八日決定した第二次勧告は、国民生活や住民福祉に重大な後退をもたらしかねない中身となっています。

 勧告は、国が法令上、地方自治体に一定の活動を義務付けたり、手続きや基準を定めたりしている「義務付け・枠付け」の廃止が柱の一つです。

 廃止するとしているものの中には、保育所の子ども一人当たりの面積など児童福祉施設の最低基準の順守義務規定(児童福祉法第四五条第二項)などが含まれています。現行の最低基準は国際的に見ても極めて貧しく、とりわけ面積基準については一九四八年制定以来、一度も改善されていません。基準の緩和は、子どもの福祉の観点から見て許容できるものではなく、地方への権限移譲には党派を超えて反対の声があがっています。

 保育については、児童福祉法第二四条第一項の「保育に欠ける」児童に対する市町村の保育の実施義務も、廃止の対象となっています。「『保育に欠ける』という基準を立て、かつ一定の保育所という施設について定め、そこで保育を実施せよということになると、これはかなり立ち入った義務付け・枠付けになる」というのが、その理由です。子どもの健やかな成長と、子育てと仕事の両立を支える保育制度までも「地方分権」の名で解体してしまおうというところに、勧告の危険性が端的に現れています。

 二次勧告のもう一つの柱である「国の出先機関の見直し」では、出先機関の廃止・統廃合などで約三万五千人の公務員をリストラする計画も打ち出しました。麻生太郎首相が「大胆な行政改革を行った後、三年後に消費税の引き上げをお願いしたい」と表明し、出先機関改革をその一里塚に据えているように、消費税増税の“地ならし”の側面も色濃いものです。

 分権委を中心に進められているいまの「地方分権改革」は、地域住民の声から出発したものではありません。ことしの「骨太の方針」が「道州制の前提となる地方分権改革」と明記したように、財界が求める「道州制」導入の前提づくりとして準備されているものです。

 「道州制」の狙いは、国の仕事を外交や軍事、司法、全国規模の開発事業などに限定する一方、憲法に基づいて本来国が責任を負うべき、国民の福祉と暮らしを守る仕事を地方自治体に押し付けることにあります。国の責任を財政的に裏付けている福祉・教育の負担金・補助金などの廃止・縮減にもつながりかねず、地方のいっそうの疲弊と地方自治の形がい化をもたらす恐れがあります。

 「地方分権」に名を借りた国の責任投げ捨て・住民福祉の切り捨て路線はやめるべきです。(坂井希)


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