2008年12月8日(月)「しんぶん赤旗」

保育制度 改悪の動き急

契約化で応益負担 「公的責任」が後退


 日本の保育制度の改悪を狙う政府内の動きが大詰めを迎えています。「これが通れば全国二万カ所の保育所は騒然となる」(全国保育協議会副会長)との懸念の声もあがる、その中身とは―。(坂井希)


社保審部会、今月にも結論

 制度改悪の論議を進めているのは、厚生労働省の社会保障審議会少子化対策特別部会(大日向雅美部会長)です。今月中旬にも結論を出すとして、議論のペースを上げています。

 いまの保育制度では、国の最低基準を満たす認可保育所(公立・私立)への入所を希望する人は市町村に申し込み、市町村が優先度の高い順に入所を決定しています。児童福祉法第二四条の市町村の保育実施義務に基づく仕組みです。

 保育料は、同一市町村内の認可園では公立・私立とも同額。収入に応じて払う応能負担です。この制度のもと、日本の保育は大きく発展し、地域に根付いてきました。

市場化拡大

 特別部会は、これを根本から変え、利用者と事業者が直接契約を結ぶ方式を導入する方向で結論を出そうとしています。

 具体的には、▽市町村が保育の必要度を認定▽保護者は指定された事業者の中から保育所を選び、入所を申し込んで、サービス内容や保育料についての契約を結ぶ▽料金はサービスに応じた応益負担▽市町村は、定員以上の申し込みがあった場合の調整など限定的に関与するだけ―といった仕組みになる案などが議論されています。

 直接契約になれば、保育は国や市町村が国民・住民に保障する「福祉」ではなくなります。保護者は、商品を買うように保育サービスを買わなければなりません。保育の「市場化」を拡大するものです。

安心感崩す

 特別部会の議論で目立つのは、市町村の保育実施義務を基礎とした現行の制度への攻撃です。「保育所に意見を言っても『市の決定だから』と言われ、一対一の向かい合った会話ができない」「市町村に保育所をどんどんつくる責任を持たせても現実的ではない」など、“市町村が責任を持つ仕組みでは、多様な保育ニーズへの対応も、スピード感を持った供給量の拡大もできない”という主張です。

 しかし、国や市町村の公的責任を後退させることは、保育の安心感を崩すものです。保育所を増やすことが急がれることは確かですが、そのためには、国や市町村の保育の実施責任を明確にし、整備計画を立て、財源をつけることこそが必要です。

 保育の「市場化」が加速されれば、劣悪な事業者の参入を防げず、質が低下する恐れがあります。企業立の保育所ハッピースマイルが、親会社の倒産で一斉閉園した事件も起きたばかりです。

 特別部会では、そうしたことを防ぐための「質の担保・指導監督」も論点として示されましたが、詰めた議論はされていません。むしろ、委員からは「保育サービスを受けられていない人がいる中で、受けている人たちの質を下げるなというのは、公平性の確保の点で、議論として通らない」などの露骨な発言も出ています。

反対広がる

 これに対し、反対の声が大きく広がっています。「現行保育制度の堅持・拡充を求める」国会請願署名は、二〇〇六年以降、三年連続で衆参両院で採択されています。十一月二十四日には東京・日比谷野外音楽堂での全国大集会が二千八百人の参加で成功。全国保育団体連絡会が九月から取り組んでいる五百万署名は、十一月二十六日現在で百五十万人分を超えています。

 全国保育協議会、日本保育協会、全国私立保育園連盟の保育三団体も、「直接契約導入反対」の態度を鮮明にしています。これらの声を押し切って制度改悪に踏み切るのか――特別部会の姿勢が問われます。


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