2008年12月7日(日)「しんぶん赤旗」

キヤノン 「非正規切り」の一方

1年間で剰余金2800億円増

正社員7万人分


 大もうけし、一年間に増やした“余った金”(剰余金)だけで七万人の正社員の年収分もあるのに、財界トップ企業が「非正規社員切り」の先頭に立つなんて―。日本経団連会長を務める御手洗冨士夫氏が会長のキヤノングループの派遣・請負社員の解雇に怒りが広がっています。御手洗会長は麻生太郎首相に「(経団連として)雇用の安定に努力する」(一日)と約束したばかりでした。


 キヤノンの100%子会社である大分キヤノンと大分キヤノンマテリアル(いずれも大分県)あわせて約千二百人の派遣・請負の非正規社員の解雇が計画されています。同じく100%子会社のキヤノンプレシジョン(青森県)では約五百人の「非正規切り」。非正規社員は時給千円、一日八時間、月二十一日勤務として計算すると年収二百万円余(残業代含まず)です。非正規社員約千七百人の雇用を維持するには約三十四億円で可能です。また、生産現場での正社員の年収は長浜キヤノン(滋賀県)で約四百万円程度(四十歳代)です。これをもとに計算すると、非正規社員約千七百人の正社員化も約六十八億円程度でできます。

 一方、キヤノンは七―九月期決算でみると、社内にため込んだ剰余金は九月末で三兆三千億円を超えます。この一年間に増やした分だけで約二千八百億円です。非正規社員十四万人の年収分、生産現場の正社員七万人の年収分に匹敵します。約千七百人の非正規社員の雇用維持に必要な額は、剰余金の一年の増加分のわずか1・2%にすぎません。正社員化にも2・4%で足ります。

 また、キヤノンは「減益」だとしていますが、一―十二月の一年間で五千八百億円もの営業利益(連結)を見込んでおり、雇用を維持する十分な体力があります。また、株主への中間配当(八月、一株当たり五十五円)だけで約七百十五億円にのぼります。非正規社員約千七百人の雇用維持に必要な額は、その5%にもなりません。

 麻生首相は雇用の維持を経団連にも「要請」したとしています。しかし、「“要請”では足りない。政府として厳しい指導と監督によって(解雇計画を)やめさせなくてはならない」(日本共産党の志位和夫委員長、五日の麻生首相との党首会談)ことが、ますます明らかになっています。


 剰余金 利益剰余金と資本剰余金のこと。いずれも、企業のもうけをため込む内部留保の一部です。利益剰余金は、企業が得た利益による剰余金で、社外に分配せず、社内にため込んだものです。積立金や繰越利益などで構成されます。資本剰余金は、新株発行など資本取引によって発生した剰余金のことです。

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