2008年11月21日(金)「しんぶん赤旗」

主張

クラスター爆弾

保有国は温存の策動やめよ


 クラスター爆弾の「規制」案を議論していた特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW=締約国百八カ国)の政府専門家会合と締約国会議は、なんの合意も得られないまま、先週閉幕しました。

 会議が決裂したのは、アメリカなどの保有国がクラスター爆弾に固執したからです。CCWは来年も議論するといっていますが、非人道兵器のクラスター爆弾の禁止は急務の課題です。CCWの外で、ノルウェーなどの有志国連合が作成(五月)し、来月三日オスロ(ノルウェー)で署名式が行われるクラスター爆弾禁止条約を発効させ、広げることが重要です。

「例外」拡大策への反発

 有志国連合が作成した禁止条約の眼目は、クラスター爆弾の使用、開発、製造、取得、貯蔵、保有をすべて禁止することです(アメリカなどは不参加)。一部の保有国に押されて「例外」を設けたとはいえ、子弾の数は十個未満、目標識別機能、自己破壊、不活性の装置などの要件をすべて満たすものだけに限っています。爆弾の大部分をなくすことになります。

 しかし、アメリカをはじめとしたクラスター爆弾保有国がCCW政府専門家会合にもちだしたのは、多くの「例外」をつくり、爆弾を事実上野放しにする案です。アメリカの主張にそった議長文書案はそれを示すものです。日本の外務省でさえ、議長文書案の「例外」が禁止条約の「例外」より「ゆるやか」だと認めています。

 アメリカのクラスター爆弾に関する新政策の中心は、不発弾として残る割合が1%以内なら認めるというものです。二〇一八年まで現存の爆弾の移転も認め、不発なら自分で爆発しないようにする装置をもてば市民の被害を「減らせる」などといっています。

 1%以内ならいいという主張はとくに重大です。一つの親爆弾に二百個、あるいはそれ以上の子弾を詰め込んだものもあります。その親爆弾を何千個も何万個もおとせば、何万個も何十万個もの子弾がばらまかれます。その1%なら何百個も何千個にもなります。それを拾い上げたり、踏みつけたりすれば爆発し、いたいけな子どもや働く民間人の多くを殺傷するのです。保有国の手前勝手な言い分を認めるわけにはいきません。

 CCWの場を使って、禁止条約の成果をだいなしにしようとするアメリカなど保有国の態度に全面禁止を願う諸国が反発したのは、当然です。保有国はCCWの場を使ってクラスター爆弾を温存させるくわだてをやめ、国際社会がつくりあげた禁止条約に歩み寄るべきです。

全面禁止の努力こそ

 日本政府の責任はとくに重大です。クラスター爆弾禁止条約に署名するといいながら、やっていることはクラスター爆弾の温存をはかることばかりです。CCWの会合でアメリカから、クラスター爆弾の新政策について説明を受けても反対せず、うのみにしました。しかも、現有の爆弾を処分する代わりに、来年度予算の概算要求に七十三億円を投じて「新型」クラスター爆弾を調達しようとしています。こうしたことと禁止条約に署名することとは両立しません。

 日本政府は、禁止条約に署名する以上、新型爆弾の調達計画を中止し、全面禁止のために率先して力をつくすべきです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp