2008年11月17日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

ゼロゼロ物件 アリ地獄

礼金・敷金・手数料なし

鍵交換される→違約金払う→お金なく家賃滞納

寝ていると突然入ってきて「出て行け」


 礼金ゼロ、敷金ゼロ、仲介手数料ゼロ。少しでも安く部屋を借りたい若者に門戸を開くように見えた「ゼロゼロ物件」ですが、家賃の支払いが一日でも遅れると鍵を換えられ、高額の違約金を払わないと再び住むことができませんでした。先月、不動産会社「スマイルサービス」に対し支払った違約金の返還などを求めて若者5人が東京地裁に訴えを起こしました。(染矢ゆう子)


「スマイルサービス」を訴えた

上田政彦さん(29)

 「あり地獄にいるようでした」。原告となった上田政彦さん(29)=仮名、東京都国分寺市=は、言葉をつまらせながら話します。

 「家賃を払えない、鍵を換えられる、違約金を払う、また払えない」。堂々めぐりが昨年1月から1年半の間ほぼ毎月、計14回繰り返されました。

 専門学校入学のため山形県から上京。昼間は学費を稼ぐため派遣会社で働きましたが、重労働で退職。派遣会社の寮を出て、敷金・礼金がない物件をさがし、スマイルサービスに。「3万円の手数料を払えば入居でき、社員もニコニコ対応してくれていいところで借りたと思っていた」と振り返ります。

 このとき交わした契約が問題でした。「施設付鍵利用契約」という特殊な契約で、期日までに支払いが確認できない場合は施設を利用できなくなるという承諾書をとられました。

仕事しても給料はなし

 新しい派遣会社で派遣された仕事は、完全歩合制でした。1カ月でケーブルテレビの契約を10件とらなければ給料は発生しません。往復2千円かかる交通費は自腹。ようやく契約が7件とれても、給料はゼロでした。

 家賃の支払いが一日でも遅れると、鍵を交換され、4万6000円の家賃に一割の違約金と施設再使用料1万5750円を加えた6万6350円を求められました。

 上田さんは、働けば毎日確実に収入のある日雇い派遣をはじめます。しかし、時給は800円台と安い上、週に3日しか仕事がないときもありました。会社に給与を取りにいくための交通費(230円)がないときは4時間かけて歩きました。毎日の生活がやっとで、期日までに家賃を払うことはできませんでした。

 スマイルサービスの対応は過酷でした。

 夜勤明けで寝ていたとき、布団の脇で呼ぶ声がして飛び起きるとスーツを着た男性が土足のまま部屋に入っていたこともありました。

 「貴重品だけもって出て行ってくれ」と追い出され、「実家から送金が届くまで待ってください」と訴える上田さんの目の前で「契約だから。ここはホテルと同じで居住権なんてない」と鍵を換えられました。

まわりにも相談できず

 「生きた心地がしなかった。死んだら楽になるのかなと思いました。お金がなくて引っ越すこともできず、恥ずかしくて周りにも相談できなかった」と話します。

 支払った違約金等は26万9150円に上りました。

 7月、新聞で「ゼロゼロ物件110番」のことを知り、電話しました。弁護士から、スマイルサービスのやり方は、住居侵入罪などの犯罪行為であると教えられ、「いっしょにたたかいましょう」と背中を押されて、裁判の原告になりました。

 上田さんは「裁判に訴えたことで、これまでの恐怖や圧迫からようやく解放されました。スマイルサービスは誠意をもって謝罪してほしい」と話します。

 一方、スマイルサービスは「裁判中なのでコメントできない」としています。


根底に貧困問題

 弁護士の宇都宮健児さんの話 借地借家法の規定に反する契約で、借家人に不利なものはすべて無効になります。通常は家賃を2、3カ月滞納している人に対しても、督促を行い、裁判所に訴えるなど法的手続きを行わなければ鍵を取り替えるなどできません。「貧困層」にある人の困窮と無知につけこんで利益を上げる貧困ビジネスの典型です。景気悪化で派遣労働者が解雇され、野宿者が急増しています。違法行為を解消させ、低家賃で安心できる住居を政府や自治体が保障していくことが必要です。


問い合わせ
スマイルサービス被害対策弁護団
03(3379)5211
(代々木総合法律事務所 戸舘圭之さん)


お悩みHunter

彼は「子どもを」と言いますが

  現在、派遣で働いています。7歳年上で同せい中の彼氏は、「そろそろ結婚して子どもがほしい」ともらしますが、子どもを育てるのに1千万、2千万円かかると思うと、躊躇(ちゅうちょ)してしまいます。私自身、体が丈夫でないので、結婚、出産に踏み切れません。断り続けて彼氏が去っていってしまわないか心配です。(23歳 東京都)

踏み切れないなら待った方が

 A 私も1年ほど前にパートナーから「子どもがほしい」と言われ、いろいろと考えました。お金の問題もそうですし、いまの生活スタイルのままで大丈夫なのか、など。

 でも、私も子どもは好きですし、なによりも、大切なパートナーの気持ちを受け入れたかったです。そして先月、待望の赤ちゃんが生まれてパパになりました。

 自分の子どもと初めて対面したときの感想は「うわっ、小さっ!」でした。こんなに小さいのにがんばって生まれてきて、一生懸命に生きようとしています。私はとにかくこの子のために惜しまずにがんばるしかないなと思いました。

 女性の場合、赤ちゃんを出産するのも大変ですし、その後も休む間もなく授乳を続けなくてはなりません。見ていて本当に大変です。

 結婚も子育ても夫婦の共同作業ですが、出産の決断は最後は女性がするべきだと思うようになりました。もしあなたが踏み切れていないなら待った方がいいように思います。

 また、結婚して子どもを育てていきたいと言っている彼が、それで去っていくとは私には考えられません。もしそうなら、彼が言っていることはウソです。

 結婚も子育ても大変ですがそれ以上に楽しいことやうれしいことがあります。どんなに大変でも子どものためなら親はがんばれるのではないでしょうか。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。



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