2008年11月5日(水)「しんぶん赤旗」

保育制度改変

社会保障審議会からみえたもの(上)

「金かけない」が本音


 十月末、「ハッピースマイル」の名前で首都圏を中心に認可保育所や認可外保育所など約三十施設を経営する企業が、経営難を理由に全施設の閉鎖を強行しました。子どもたちは投げ出され、保育士らは解雇という突然の事態に、父母は大きな不安と混乱のなかにおかれています。保育を営利企業にゆだねるとどういう事態がおこるかを深刻な形で露呈しました。

 こうしたなか、厚生労働省の社会保障審議会の少子化対策特別部会が急テンポですすめているのが、営利企業の参入促進など、保育制度の「規制緩和」の議論です。保育をどう変えようというのでしょうか。

明確な説明なし

 一つは、保育所への入所・運営に自治体が責任をもち、入所も自治体を通して行うという現在の制度を、父母と保育所との「直接契約」にするという議論です。しかし、関係者の批判や反対が強いため、「現行制度に問題がある」ことをさまざまに並べて結論を導き出そうとしています。

 部会では、働く女性の増加や働き方の多様化、保育需要の増大、子育て支援などへの対応の必要性が強調されています。しかし、なぜ現行制度で対応できないのか、明確な説明はありません。

 一方で、「保育サービスの需要の増大に伴い、多額の公費を投入する制度となってきた」(審議会資料)と指摘しています。保育所の増設が求められるなかで、国と自治体が保育所の運営費を負担する今の仕組みでは、保育にお金がかかりすぎるというのが本音です。

 また、認可保育所に入れた人と、入れずに認可外施設を利用せざるをえない人とで不公平があるのも、制度に問題があるからだといいます。

 今の制度は、自治体に、「保育に欠ける」子どもへの保育の実施を義務づけています。同時に、「付近に保育所がない等やむを得ない」場合は、「その他の適切な保護」(児童福祉法二四条)を自治体がとるとしています。

 「公平性」をいうのなら、義務を果たせるだけの保育所をつくってこなかった責任が問われます。また、父母、関係者はこれらの規定を根拠に、“すべての子どもに保育の保障を”と行政に要求して、一定の基準を満たした認可外保育所に自治体の助成をさせてきました。

 政府は、「公平な保障」にとりくむ自治体の努力に何の支援もしてきませんでした。

 部会では、「その他の適切な保護」という例外規定があることが、認可外施設を容認する根拠となり不公平を生んでいると批判されています。その議論の裏には、「公平性」を逆手にとって自治体の義務規定そのものをなくそうというねらいがあります。

判定制度を検討

 部会では、「保育に欠ける」という保育所入所の判断基準についても、女性の就労が一般的でなかった時代の制度で、働き方の多様化に対応できないとしています。

 そもそもこの規定は、親の就労や病気などで保育を必要とする子どもの保育を受ける権利を示すものです。親の仕事がパートや派遣社員、自営業などであっても、保育が必要な子どもは当然、「保育に欠ける」として対応されなければなりません。

 「保育に欠ける」範囲が狭められ、そうした子どもが利用できない原因も、保育所整備の遅れにあります。実際に待機児童のない地域では、柔軟な対応がなされていることは部会でも報告されています。

 部会の議論では、介護保険の要介護認定のような「要保育度」を判定することが検討されています。そうしたところで、介護保険のもとで特養ホームの待機者が三十八万人という実態が示すように、保育所が足りなければ入れない人が出ることに変わりありません。(つづく)


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