2008年11月1日(土)「しんぶん赤旗」

温暖化防止

米不参加なら日本も

次期協定で外務省高官


 地球温暖化防止の次期協定の交渉を担当する外務省高官が、交渉の最優先課題は米中両国の参加であり、米国が新協定に不参加なら日本も参加すべきでないと発言していたことが判明しました。

 外務省国際協力局の杉山晋輔・地球規模課題審議官は二十三日にワシントンで開かれた日米関係のシンポジウムで発言し、現職に就任した時に高村正彦外相(当時)から、「君の仕事は非常に複雑にみえるかもしれないが、単純に言えば米国と中国を関与させることだ」との訓示を受けたと紹介しました。

 杉山氏は、「(世界の温室効果ガス排出量の20%を占める)米国が(新協定に)参加しないなら日本も参加すべきではない」と表明。米国と同様の排出量の中国も参加しない協定なら「あまり意味をもたない」と述べました。

 同氏はまた、「もし米新政権が来年末までに交渉を達成する覚悟なら日本政府もついていくべきだと思うが、新政権や新議会が米国内で(新たな温暖化対策への支持を)どこまで獲得できるか分からない限り、日本は中国やインドと交渉しない」と述べ、温暖化問題でも自主性放棄の対米追随姿勢をとることを公言しました。


解説

人類的課題も米に丸投げ

 杉山氏の端的な発言は、十二月にポーランドで開かれる国連気候変動枠組み条約第十四回締約国会議(COP14)に向けて政府が九月末に出した提案文書など、政府の公的立場に基づいたものです。

 温暖化防止は、地球上のすべての国が全力を注ぐべき全人類的課題です。現行の京都議定書の第一約束期間が切れる二〇一三年以降の温暖化防止の新協定に、米国や中国が参加することは重要です。ただし、それは、これまでの国際合意を踏まえ、手順を尽くして実現すべきです。

 この交渉を首尾よく進めるための最優先課題は、これまでの温暖化に主要な責任を負う先進国に属する日本や米国が、率先して野心的な削減目標を掲げ、それを達成すべく最大限努力することです。

 ところが杉山氏が示したのは、(1)日本の削減目標決定も、それを達成する政策・措置も米新政権しだい(2)これまでの温暖化に歴史的責任を負う米国と、そうでない中国を同列視する―という立場です。これでは、中国などに対しても説得力をもたず、今後の交渉を混乱させるだけです。

 杉山発言はまた、二〇年までの中期削減目標を来年まで示さないという政府の立場が、結局は対米追随の産物にすぎないことを示しています。政府はこれまで、“削減目標は交渉の道具だから即座に示せない”と説明していました。しかし杉山氏は、米国が方針を固めなければ日本の方針も決められないことを率直に告白しました。こんな姿勢で日本が温暖化問題で国際的指導性を発揮できるわけがありません。(坂口明)


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