2008年10月18日(土)「しんぶん赤旗」

原則は守り、一致点で柔軟な対応 共産党が伸びてこそ政治は変わる

BSイレブン 市田書記局長が縦横に語る


 日本共産党の市田忠義書記局長は十六日放映のBSイレブン「インサイド・アウト」の単独インタビューを受け、国会情勢から総選挙方針まで縦横に語りました。司会は、ジャーナリストの二木啓孝氏、解説に「毎日」論説委員の松田喬和氏があたりました。


米国と大企業中心の政治にメス――国民要求に根ざした論戦への共感

 二木氏は、「最近、共産党の支持者や党員が増えているが、これはどうみるか」と問いかけ、次のようなやりとりになりました。

 市田 共産党への支持が広がっているというのは、いまの政治の行き詰まりの根本に横たわるアメリカいいなりと極端な大企業中心主義にたいしてメスを入れるという旗印を掲げて、国民の要求に根ざしながら正々堂々の論戦をやっていることへの共感じゃないかと思います。

 二木 若者からすれば、ある意味で共産党は独自路線を歩んでいるところに…。

 市田 ぶれないで筋を通しているなと。派遣労働者などは、ひどい状況に置かれています。そういう実際に即して、生の声をぶつけながら、自然現象でなく、大本に財界の要求にもとづく一九九九年の労働者派遣法の改悪がある、すくなくともその時以前の状況にもどせと迫っています。

 二木 じつは何十年ぶりに『蟹工船』をもう一回読んだ。(『蟹工船』ブームは)いまの政治状況、社会状況の反映としての動きということなんでしょうか。

 市田 客観的情勢の成熟と同時に、私たち自身が国民のなかに飛び込んで、一緒に議論するなかで共感を得始めたということで、非常にいい手応えを感じています。

国政の基本問題について、争点を鮮明にして信を問え

 話題は、国会情勢に。二木氏は、民主党が解散・総選挙を早めるために新テロ特措法延長案の審議を「サクサクとすすめてしまおうとしている。政局を軸にしすぎて、論議を軽視しているんじゃないのかとみえる」と指摘しました。

 市田氏は、「できるだけ早く解散して国民の信を問うべきだというのは、私たちの基本的なスタンスだ」と指摘したうえで、次のように述べました。

 市田 争点も鮮明にしないで、何がいま国民的に問われているのかを国民の前で明らかにしないまま、とにかく解散・総選挙をやれというのは、やはり正しくない。国政上の基本問題について、国民の前で、国会の場で堂々と論戦をやったうえで、争点を鮮明にして信を問うべきだと思います。

 その上で市田氏は、民主党が補正予算案では「三日間の審議でOKだと賛成した」ことや、新テロ特措法延長案では「一日、一時間でもいい」と採決日程まで提案したことに、「驚いた」と指摘し、次のように述べました。

 市田 解散というのは、請い願うものではないと思うんです。(民主党は)国民の利益や暮らし、憲法や平和は横において、とにかく解散だと(いう姿勢です)。新テロ特措法延長案の問題でいうと、「民主党が政権を取ってもあまり変わらないから安心してくれ」という、アメリカへのメッセージだと思うんですよね。こういうやり方で国民の支持を得られるんでしょうか。

 これに対し松田氏も、「市田さんがいうように、スケジュール、出口を先に決めて、あとは中身をつめるというのは本末転倒だ」と批判しました。

 市田氏は、民主党自身、昨年の国会では、インド洋での給油活動について大問題だといっていたのに、「その言葉はいったいどこにいったのか」と指摘。「それはやはり偶然ではない。やはり日米同盟絶対だ。その枠から出られないために、結局こういう問題で妥協してしまった」とのべ、補正予算案賛成についても、大企業中心主義に対抗する旗を掲げられないところからくる民主党の本質だと批判しました。

行き詰まりの打開策示せなかった麻生首相、対抗軸がない民主党

 その上で、国会論戦について、次のように述べました。

 市田 麻生首相は、『文芸春秋』で政策をぶつけあってとおっしゃっていたけれども、少なくともわが党の質問に対しては、まともな答えはありませんでした。民主党への攻撃はいろいろやりましたけれども、この日本の行き詰まりをどうするのかという打開策は、示されなかったと思うんです。

 では、民主党はどうだったかというと、やはり政局的対応、党利党略で対応した。まともな論戦ができない、対抗軸がないために、とにかく解散さえ勝ち取ればいいと(いう対応です)。

 この間の国会論戦を通じて、政党配置の構図がわかりやすくなって、日本共産党の存在意義が非常に鮮明になった。その意味では、私たちは、国民にどの党を選んでもらえばいいのかという選択肢を示しえたと(思います)。

 二木氏が日本共産党の新しい選挙方針について質問したのに対し、市田氏は「本来、全選挙区に候補者を立てるべきだという基本的考えは変わっていません。ただ、この間の選挙の経験を踏まえ、現状での力関係やわが党の力量を客観的に見たときに、共産党が議席を伸ばそうと思えば比例代表選挙に力を集中することが非常に大事だと考えた」と答えました。そして、「小選挙区に候補者をたてないところはもっぱら比例代表選挙で共産党と書いていただく人を増やすために総力をあげる」との立場を表明しました。

節目でぶれない共産党が伸びることが要求実現の力になる

 次に、総選挙の結果「政権交代」が起きた場合、新しい国会での日本共産党の立場に話が進みました。

 二木 自公で過半数がとれなかった場合は、大きく政治の構図が変わってくるが、そのとき日本共産党はどの位置にいるのか。民主党と手を結べるところはあるのでしょうか。

 市田 私たちは国会内で、国民の要求実現に一歩でも半歩でもプラスになることならば、一致点での協力はこれまでもやってきたし、これからもおおいにやっていきたいと思います。現に、後期高齢者医療制度の廃止では野党が共同していますし、派遣法を派遣労働者を守る法律に抜本的に変えていく点でも、若干の意見の違いはありますが、力を合わせようということでやっています。

 共産党が伸びれば、国会のなかでも積極的にさまざまな提案もし、一致する政党とは一致点でいっそう力を合わせて要求実現のためにがんばりたいと思います。

 そのうえで市田氏は、労働者派遣法で一九九九年の大改悪に唯一反対したことや、後期高齢者医療制度でも、健保法改悪のときに「高齢者だけ別枠の医療制度をつくるべきだ」という付帯決議を他党が一緒になってあげたときに反対したことなどを紹介。「こういう重要な節目でぶれないでがんばってきた党が伸びることが、国民の要求を実現していくうえで大きな力になる」と述べました。

総選挙を国民本位の民主的政権つくる第一歩に

 政権に対する基本的考え方を次のように述べました。

 市田 同時に、政権をともにするかということになると、国政上の基本問題での一致がなければ、有権者に対して無責任だということになります。そういう点でいえば、憲法や消費税など国政の基本問題で、民主党と日本共産党が政権協力をすることは、いまの時点ではありえません。

 松田 市田さんがおっしゃった(異常な大企業中心、アメリカいいなりの政治をただすという)二大原則を出してくると、民主党はのめないと思いますね。

 市田 私は、国民のみなさんは「いまの政治の中身を変えてほしい」と願っておられると思うんです。同時に、政権交代に、われわれは消極的ではないんです。自公政権はだめだと思っていますから、政権交代はするべきだと思います。ただ中身をかえないまま、政権の担い手だけかえても日本の明日はひらけません。

 われわれは、政権交代と言うんだったら、「国民が主人公」の民主的政権をつくるべきだと考えています。大企業いいなり、アメリカいいなりの政治にメスを入れ、国民本位に切りかえる民主的政権をつくるという立場です。今度の総選挙後、すぐにというのは難しいと思いますが、その第一歩にしていこうと考えています。

 かたくなだとか、原則ばかり言っていると誤解される向きがありますが、確かに、国民の立場からみて、絶対にゆずってはならない大事な原則は守りとおしてきました。戦前、殺されようが投獄されようが、侵略戦争反対、主権在民の旗を守り続けたこと、戦後もアメリカいいなりや極端な大企業中心主義という根本問題ではぶれずに筋をとおしてがんばってきたことなどの点では、非常に原則的です。

 しかし、国政の基本問題で意見が違っても、個々の一致できる点ではおおいに力をあわせようという点では、大変柔軟な態度を一貫してとっています。こういう党が伸びることが、やはり政治を変えていく大きな力になるし、やがては民主的な政権への道につながっていくと確信しています。

 これに対し、二木氏は「二大政党制のもとでは、実は中規模、小規模の政党が政局を握ってくる」と発言。市田氏は「政権をともにすることはできないと言っただけで、いろいろな局面でどういう態度をとるかは、国民の利益にかなう立場を一貫してとるということで、ご理解いただけると思います」と述べました。

 松田氏も「(自公と民主の)議席数の差がどれくらいになるかによって、(共産党が)キーパーティー(カギを握る党)にもなる」とコメントしました。


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