2008年9月27日(土)「しんぶん赤旗」

社会リポート

米原子力空母 横須賀配備 消えない不安

震度7、襲ったら


 米海軍横須賀基地(神奈川県)の12号岸壁に横付けされた米原子力空母ジョージ・ワシントン(満排水量10万2000トン)。その巨体はいかにも難攻不落です。日米両政府がくりかえす「安全宣言」に反し、横須賀市民などの核・放射能事故への不安は強まりこそすれ弱まることはありません。(山本眞直)


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(写真)首都直下型地震で、三浦半島活断層などを震源とした場合の震度予測。横須賀市域は震度7を示す赤い部分で囲まれている=中央防災会議専門調査会報告(案)

 市民の間でもちあがっている不安の一つが「地震災害」です。

 京浜急行の横須賀中央駅に近い貴金属店の店主がいいます。「親の実家も大震災で傾きもう少しで犠牲になるところだったそうだ」

 一枚の地図があります。東京湾を囲む首都圏での地震による震度予測が書き込まれています。三浦半島の活断層を震源としたとき、東京都と神奈川県内のいくつかの区域とともに赤く塗られた横須賀市。「震度7」と予測されています。政府の中央防災会議の首都直下型地震対策専門調査会報告(案)です。

85年前

 横須賀市は関東大震災(一九二三年九月一日)で壊滅的な被害を受けました。民家など一万四千四百四十一戸が焼失・全半壊し、死者・行方不明者は七百七人にのぼりました。

 日本有数の軍港だった横須賀港。海軍工廠(こうしょう)の被害も甚大でした。建造中の空母「天城」は大破し廃艦になり、軍艦「三笠」も激震で艦底を損傷しました。海軍工廠内だけでも百七人が死亡、港内も「火の海」になったと記録されています。

 「震度7」の激震による原子力空母への影響は測り知れません。

 「深刻な事態を引き起こす可能性がある」と指摘するのは原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会共同代表の呉東正彦弁護士。原子力空母のための十二号岸壁浚渫(しゅんせつ)工事の差し止め訴訟でも地震による危険性を取り上げました。

 「首都圏での直下型地震はいつおきてもおかしくない時期にきています。原子力空母は原子炉の冷却水を海水から取り込みます。関東大震災でも実際に海底の隆起や津波が発生しました。空母が入港中であればこの取水が困難をきたす可能性があります」

 原子炉が耐熱限界をこえる高熱で融解、破損し、大量の放射能が漏れる、というメルトダウン(炉心溶融)になる可能性です。

 満艦飾でかざった原子力空母が接岸した十二号岸壁から直線で一キロもない市内汐入町の一角。小さな公園の奥に「大震災遭難者供養塔」がひっそりと建っています。

東京も

 供養塔がある、と教えてくれた古老(80)が不安そうにいいました。「大震災で母が土塀の下敷きになりあやうく命を落とすところだった。原子力空母が地震で万が一にも放射能が散らばるような事故が起きたら、横須賀はもちろん横浜や東京の方まで大変だね」

 公園から数十メートルの道路際の風景に見覚えがありました。今年三月に横須賀基地を脱走した米兵によるタクシー運転手殺人現場です。

 「政府は米海軍の原子力艦の安全性を確信しています」。こんな書き出しのパンフレットが横須賀市内で配布されたのは二年前のことでした。発行人は当時の外務大臣で、二十四日の臨時国会で新首相に指名された麻生太郎氏です。パンフの内容は「安全」をくりかえす米軍の「ファクトシート」(公式文書)の受け売りでした。

 麻生首相は組閣後の記者会見でこう豪語しました。「明るく強い国をつくる」

 国民のくらしや安全よりも、「日米同盟」の名で世界の干渉戦争の「殴り込み部隊」である危険な原子力空母を受け入れるなどアメリカ言いなり政治の「継続宣言」です。



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