2008年9月26日(金)「しんぶん赤旗」

政府のすすめる雇用機構廃止

公共職業訓練 崩す恐れ


 政府は「独立行政法人整理・合理化計画」のなかで、職業訓練業務を担う雇用・能力開発機構(厚生労働省所管)の廃止に向けて、年内に結論を出そうとしています。公的職業訓練のあり方の議論抜きに結論を急ぐ動きに、懸念の声が出ています。

 十七日、政府の行政減量・効率化有識者会議(座長=茂木友三郎キッコーマン会長)は「機構廃止」の最終方針を確認しました。機構の運営する施設についても▽職業能力開発総合大学校(神奈川県相模原市)は廃止または民営化▽職業能力開発センター(ポリテクセンター、全国六十一カ所)、職業能力開発大学校・短期大学校(ポリテクカレッジ、全国十一校)は都道府県や民間に移管―などを打ち出しています。

 赤字経営の職業体験施設「私のしごと館」(京都府)の廃止などを例に、「無駄な独立法人」という議論ばかりが目立っています。

 こうした動きを、職業教育に詳しい湘南工科大講師の植上一希さん(青年期教育論)は「近年の職業訓練政策全体の流れをみると、機構廃止は日本の公共職業訓練を掘り崩すきっかけになりかねない」と危ぐします。

 機構や都道府県が運営する公共職業訓練校は、安い学費で若者が手に職をつけ、社会に出る貴重なステップボード(踏み台)の役割を担っています。二〇〇六年度の実績では、学卒者訓練を機構で八千人、都道府県で一万五千人が受講。就職率も機構98%、都道府県93%と高率です。

 ところが、政府の規制改革会議は「民間事業者によっても供給可能」「民業の圧迫」などと公共職業訓練校を敵視しています(七月「中間取りまとめ」)。

 地方の財政難と「構造改革」のなかで、都道府県の訓練校は近年縮小傾向にあります。「このうえ総合大学校が廃止されて指導員の養成が弱まったり、財政力にばらつきのある自治体に職業訓練が丸投げされたりすれば、全体が先細りしかねない」と植上さん。二十六日には研究者や職業訓練校指導員らが集い、東京・文京区スポーツセンターで緊急学習会を開きます。(坂井希)


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