2008年9月19日(金)「しんぶん赤旗」

主張

保育制度の改変

ひろがる反対の声うけとめよ


 「子どもによりよい保育を」と願う多くの国民と父母、保育関係者のたたかいが正念場です。

 政府が、国と自治体による保育の実施と水準の確保、公費負担の責任をなくし、企業まかせの安上がり保育をすすめる制度改変を急いでいることに、父母、保育関係者からつよい不安と怒りがひろがっています。この夏の全国保育団体合同研究集会は一万数千人の参加で大きく成功し、最終日の緊急集会では、厚労省前を二千人がとりまいて「公的保育制度を壊すな」と訴えました。

保育団体も反対表明

 政府・厚労省は、年内に保育制度改変の結論を出すとして、社会保障審議会の少子化対策特別部会の場で検討を急いでいます。

 日本保育協会、全国保育協議会、全国私立保育園連盟、全国保育士会の会長ら保育関係者を集めたヒアリングが、先日、開催されました。規制改革会議などが求めている保育所への直接契約・直接補助方式の導入、保育の最低基準の緩和・撤廃に対して、「国の責任で築いてきた公的な保育制度の基盤を崩し、後退させる」「保育の質を確保するために最低基準は崩してはならない」「保育は単なる託児ではなく、子どもの育成は公的性格のもの」と、すべての関係者が断固反対を表明しました。

 重大なのは政府・厚労省がこうした意見を真摯(しんし)に受け止めず、「結論先にありき」で改悪につきすすもうとしていることです。

 そもそも今回の保育制度改変は、保育現場や父母の要求から出発したものではありません。財界をはじめ規制改革会議や経済財政諮問会議などが政府に迫ってきたものです。直接契約の導入や最低基準の撤廃は、保育を「市場原理」にゆだね、企業中心の保育サービスで量を増やそうというものです。これに対し、子どもの日々の成長、発達を支える保育の専門家から「子どもの最善の利益に反する」と批判があがるのは当然です。

 日本の保育制度は、父母や保育関係者の運動によって、保育所建設、産休明け保育、延長保育などの拡充をかちとりながら、一歩一歩、発展させてきたものです。

 一方、政府は、社会保障切り捨て、地方切り捨てをすすめ、保育所の整備や運営費の抑制、諸外国に比して貧しい職員配置や施設基準を放置してきました。その結果、非常勤保育士が半数を超える自治体もあるなど労働条件の悪化が深刻化しました。その中でも保育士が専門職としての誇りをもって、子どもの育ちの問題や父母の生活苦などを背景としたさまざまな保育要求にこたえ、必死に保育水準を支えてきたのが実態です。

市場任せの破たん明らか

 介護保険や障害者自立支援法など、政府が社会保障の「構造改革」として国民の反対を押し切ってすすめた制度改悪は、次々と破たんした姿を示しています。福祉を市場原理と営利にゆだねた結果、コムスン問題などもうけ優先のゆがみを生み、障害者やお年寄りがサービスを受けられない事態をひろげました。強行された後期高齢者医療制度では広範な国民から廃止を求める声が噴出しています。

 父母、保育関係者、国民の声を真剣に受け止めて、公的保育制度の改変ストップ、保育の質の向上と拡充をすすめる道こそ求められています。


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