2008年9月18日(木)「しんぶん赤旗」

核兵器廃絶を提唱

国際戦略研、異例の報告


 【ロンドン=岡崎衆史】ロンドンに本部を置く国際戦略研究所(IISS)が十六日、「核兵器廃絶」と題した報告書を発表し、核兵器廃絶を正面から取り上げ、それに向けた具体的取り組みの開始を呼びかけました。

 各国の軍事力に関する報告書を出してきたIISSが核兵器廃絶を呼びかけるのは異例のことです。

 報告は、「核保有国は核兵器を全廃する政治的、道徳的義務を持つ」とし、保有国が核不拡散条約(NPT)下のこの義務を果たそうとしなければ、「核兵器をめぐる秩序を長期にわたって維持、強化することはできない」と警告。核不拡散体制の維持にとって、核保有国による核廃絶の努力が不可欠との考えを示しました。

 報告は、核廃絶が求められる理由として、(1)NPT体制を維持し、「核秩序の崩壊」や「競争や戦争によるより危険な(拡散の)活動」を防ぐ(2)原子力の民生利用の拡大が核拡散につながるのを防ぐ(3)核兵器によるテロの防止(4)非核保有国による核兵器取得の防止(5)偶発的な行為による核兵器使用とそれによる惨状を防ぐこと―を挙げました。

 報告は、核廃絶実現のため、有力シンクタンクの主催で、核保有国、非核保有国双方の専門家が参加するハイレベルの非公式委員会を設置し、核軍縮の実施状況の検証など、廃絶実現に不可欠な具体的措置の検討を行うことを提唱しました。

 また、二〇一〇年のNPT再検討会議について、「世界の核秩序の刷新にとって重要な機会だ」として、これに向けて、核廃絶の具体的検討を始めるよう促しました。


 国際戦略研究所(IISS) 一九五八年に設立された民間の国際的研究団体。国際安全保障や軍備管理に関する情報提供と研究が目的。現在、百以上の国に、専門家、研究者など二千五百人の個人会員と四百五十の協力団体を擁しています。各国の軍事力を比較した『ミリタリー・バランス』と、世界の軍事・政治情勢を総括する『戦略概観』の二つの年次報告を刊行。毎年、地域の安全保障に関する国際会議も主催しています。



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