2008年9月1日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

福祉支える 誇り 悩み


 保育や介護など福祉の仕事をする青年たちが8月下旬に東京都内で開いた「プッチわか。2008 in TOKYO」。その中で「どうなの? 福祉に働く青年のいま」と題して交流しました。全国の564人からアンケートを集め、その結果をみながら、話し合いました。(染矢ゆう子)


成長に感動

 集まったのは、全国福祉保育労働組合青年部に所属する6都道県の25人です。

 仕事のやりがいは、「悩んでいた子どもの姿がかわってきたとき」と話したのは保育士の冬美さん。民間保育所で五歳児クラスを担任しています。

 「子どもの成長にはいつも感動させられてこの仕事やっててよかったと思います」

 アンケートでも、仕事へのやりがいを、8割以上の青年が「そう思う」「ややそう思う」とこたえています。

手取り13万

 ところが―。

 「では、定年まで働き続けられそうな人?」。司会者の質問に、参加しただれも手を挙げませんでした。

 アンケートでも「続けられそう」と答えた人は、5%にとどまりました。

 福祉の仕事にやりがいを感じながらも、定年まで働き続けられない―と多くの青年が悩んでいるようです。

 その悩みの原因の一つは、賃金など厳しい労働条件にあります。

 アンケートによると平均の手取りは勤続5年で月16万円。「あるべき賃金」との差は6万円にもなります。現在の賃金での生活が「厳しい」と答えた人は8割近くもいました。

 介護福祉士の寛之さんは1回3500円の手当が出る夜勤を月に3―4回こなしても、手取りは13万円です。

 「将来は真っ暗。資格をもっていても、食えないからと介護の仕事につかない人もいます。海外から人をよぶという話もあるけど、日本人が働いてもいいと思える労働条件にしないと問題は解決しない」と訴えました。

頼りは組合

 「組合がなかったらやめてたかも」と打ち明けたのは、保育園の栄養士の陽子さん。

 「自分のできなさに悩んでいたときに話を聞いてもらって、しんどいのは自分だけじゃないと思えた」と振り返り、「くじけるときもあるけど、組合の会議に出ていくとみんなでがんばろうと元気になる」と話しました。

 アンケートでも、多くの青年が「賃金改善」(82・8%)や「職員の増員」(43・4%)のために、労働組合にがんばってほしいと感じています。

 福祉保育労青年部は交流した後で大会を開いて、「みんなで働き続けられるように」「つながりを広げていこう!」と方針を決めました。

感じる貧困・格差

 この日の交流では、派遣やパートなど非正規労働者の親がふえるなか、「保育所で格差を感じるときがある」という話も出ました。

 「保育料滞納が原因で転園してきた父子家庭の子どもがいる」と話したのは文さん。

 「お父さんは派遣で働き、契約が切れると収入がなくなって、滞納を伝える紙が子どものロッカーに入っています。生活が安定せず大変です」

 佳代さんは、パートで残業しながら働く母子家庭の母親の話を紹介して、「保育園では子どもは平等に遊んでるけど、背景には差があるんだと感じてます」と話しました。

グラフ

国の抑制策が原因

立教大学教授 浅井春夫さん

 福祉の仕事は、人間とかかわる仕事なので多くの人がやりがいを感じると思います。だから、「愛と奉仕」がセットにされやすく、女性差別も加わって、低賃金に抑え込まれてきました。

 アンケート結果に示された、組合員の一時金も加えた平均月収が約20万円というのは、ちょうどOECD(経済協力開発機構)の「貧困ライン」の所得水準と同じです。だからワーキングプアの実態にあると言わざるをえません。

 親元から通い、未婚だから生活が成り立っているという青年が多いのではないでしょうか。

 福祉で働く青年が苦しい生活を強いられている背景には、政治が福祉予算や最低基準を厳しく抑制する政策をとりつづけていることがあります。

 現在の政府には、これからの福祉を担う青年をバックアップする意思がないことの表れです。

 良質の福祉サービスを保障するためにも、賃金の引き上げなど労働条件の改善は急務です。

 国は福祉予算の抑制路線をやめ、福祉にもっとお金を投入すべきです。


 全国福祉保育労働組合 民間の福祉施設、保育所の仲間でつくる労働組合。2007年8月に青年部ができました。青年部では2年に1度、全国の青年が集まる「なつわか。」、東西に分かれる「プッチわか。」を開いています。


お悩みHunter

資格教材の解約断られたが…

  1カ月前、自宅を訪ねてきたセールスマンに、ある資格の教材を買わないかと勧誘されました。以前から興味のある資格だった上に、講義を収録した見本用のテープも聞き取りやすく、添削後の答案見本も丁寧に赤ペンが入っていました。私は、約10万円の教材を、クレジットによる分割払いで買う契約書を交わしました。が、届いた教材で勉強したら、テープは雑音がひどく、添削も見本とは大違いでした。先方に苦情を言って解約を申し出たのですが、「クーリングオフの期間を過ぎているし、契約書を交わしたのだから」と応じてくれません。何とか解約できないでしょうか。(25歳、女性)

解約できる。損害賠償も

  「クーリングオフ」は、消費者保護のために、訪問販売などにより契約した場合、一定の期間、無条件で解約できる制度ですが、このほかにも、契約を解除したり、代金の返金を求めたりできる場合があります。

 一つは、商品にすぐには発見できない欠陥があって、契約の目的を達することができない場合、欠陥を知って1年以内であれば契約解除して代金の返還を請求できます。

 あなたの場合、テープの雑音がひどく教材としての機能に欠陥があるのですから、解約できます。

 また、添削が、見本と異なる劣悪なものであるなら、契約とは違う不完全な商品を提供したことを理由に代金相当の損害賠償請求ができます。

 勧誘時に販売者が、商品の品質などについて不実のことを告げたことあるいは、事実を告げないことにより、契約締結した場合にも契約を取り消すことができます。詐欺や脅迫の場合も同様です。

 また、録音テープは特定商取引法の指定商品にあたりますから、販売者と提携しているクレジット会社に対しても、契約解除・取消を主張して、以後の支払いを拒否できます。

 詳しくは各地の消費生活センターなどに相談してください。


弁護士 岸 松江さん

 東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp