2008年8月26日(火)「しんぶん赤旗」

米兵犯罪の裁判権放棄

日米密約 今も有効

2001年 米軍法務担当が論文

法務省、否定せず


 米兵の「公務外」の犯罪で「特別な重要性」がない限り日本側が一次裁判権を放棄するとした日米密約について、在日米軍の法務担当者らが二〇〇一年発表の論文で、密約は今も忠実に実行されていると指摘していたことが分かりました。


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(写真)『駐留軍隊の法律に関するハンドブック』

 在日米軍の法的地位を定めた行政協定の改定時(一九五三年)に日本側の一次裁判権放棄に関する密約が結ばれていたことは、米政府の解禁文書などですでに明らかになっています。しかし、それが現代にも有効に働き続けていたことが分かったのは初めてです。

 論文の題名は、「日本の外国軍隊の地位に関する協定」。在日米軍法務官事務所国際法主任のデール・ソネンバーグ中佐と在韓国連軍・米軍司令部のドナルド・A・ティム法務官特別顧問の共同執筆となっています。英国のオックスフォード大学出版の『駐留軍隊の法律に関するハンドブック』(〇一年)に収められています。

 論文は、行政協定の改定に際し、「日本は非公式な合意を結んで、日本にとって『特別な重要性』がある場合を除き、裁判権を行使する第一次の権利を放棄することにした」と、密約の存在を明記。その上で「日本はこの了解事項を忠実に実行してきている」とし、密約が今も有効であることを強調しています。

 さらに、外国での米兵犯罪に対する米側裁判権を最大限にするのが米国の政策目標だと指摘。そのため日本では、(1)不起訴(2)(日本側から米側への)起訴の意向の通知時間をなくす(3)すでに起訴されている事件の裁判権を放棄させる―などさまざまな措置がとられていると明かしています。

 犯罪を起こした米兵を守るため、米軍があらゆる手段を講じて日本の裁判から逃れさせようとしている実態を示しています。

 この問題では、法務省が五三年に日米密約と同じ内容の通達を出していることも判明しています(本紙五日付)。同通達の現時点での有効性について法務省は、本紙の取材に「明らかにすることは差し控える」と回答し、否定していません。


 米兵犯罪に対する裁判権 一九五三年改定の行政協定は、米兵犯罪に対する一次裁判権(優先的に裁判をする権利)について、「公務中」の場合は米側が、「公務外」の場合は日本側が持つと定めました(現在は地位協定に同様の規定)。日米間の密約は、「公務外」の犯罪でも日本側が「特別な重要性」がない時は一次裁判権を放棄するというものです。



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