2008年8月19日(火)「しんぶん赤旗」

主張

電力CO2排出増

エネルギー政策の転換は急務


 猛暑が続き、北京五輪や高校野球のテレビ中継にくぎ付けになるなかで、気になるのが電力消費です。電力会社の二酸化炭素(CO2)排出量が増えています。

 なかでも、全国の電力十社のうち販売電力量が圧倒的に多く、CO2排出量も最大の東京電力では、二〇〇七年度の排出量が前年度比で30%も増加しました。東電一社で国内の総排出量の一割にも達する規模になっています。

原発推進のツケ

 地球温暖化防止に逆行する事態になったのは、原発の稼働率が低下したためです。

 東電がCO2排出量を大幅に増やしたのは、電力量の伸びよりも、単位電力量あたりの排出量が25%も増えたことにあります。新潟県にある柏崎刈羽原発が中越沖地震(〇七年七月)で被災し長期にわたって停止していることから、火力による発電を増やした結果です。

 東電は地震による揺れの大きさが「想定外」だったとしています。しかし、能登半島地震(〇七年三月)でも北陸電力の志賀原発が「想定外」の揺れに見舞われました。これらは、全国のどの原発も同じ問題に直面する可能性があることを示しています。政府と電力業界が一体で進めてきた原発推進政策の無謀さはすでに明らかです。

 原発は地震などの災害だけでなく事故やトラブル、またデータのねつ造などによっても停止が相次ぎ、稼働率の低い状況が続いています。稼働率を無理に引き上げれば、重大事故につながりかねません。放射性廃棄物の処分方法も確立しておらず、原発は安定的な電源ではありません。原発をCO2を排出しない「クリーンエネルギー」ともてはやすなどもってのほかです。

 温暖化対策を軌道に乗せるには、省エネ対策とともに、不安定な原発に依存したエネルギー政策を改め、重点を自然エネルギーに移すことが不可欠です。温暖化対策の実施には時間がかかるため、対策は急がねばなりません。

 温暖化防止のための京都議定書の第一約束期間が今年から始まっています。同期間が終了する一二年までに、日本は温室効果ガスの排出量を一九九〇年段階から6%削減することを義務付けられていますが、実際の排出量は逆に増え続けています。

 原発依存をはじめとするこれまでのエネルギー政策の転換は待ったなしです。石油・石炭などの化石燃料から太陽光・熱、風力、小水力、地熱、バイオマスなどの自然エネルギーへの転換を進めるため、政府は目標を設定し、対策を講じるべきです。

自然エネルギー普及を

 日本共産党は六月に発表した地球温暖化問題についての見解で、自然エネルギーの割合を二〇年までに欧州連合(EU)並みの15―20%に引き上げることを目標に、自然エネルギーの開発・利用に取り組むよう提言しました。

 電力会社側には自然エネルギーを「不安定」「コスト高」などとして退ける傾向があります。電力会社に自然エネルギー利用を促すとともに、自然エネルギー事業者が長期的な採算見通しを立てられるよう、原発に偏重した電源開発促進税の見直しなどで、電力会社が電力を固定価格で買い取る制度を創設することがカギです。



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