2008年8月12日(火)「しんぶん赤旗」

けいざい そもそも

シーリングって何だ


 七月末のことです。シーリングという言葉が新聞紙上をにぎわしました。“天井”がどうしたのか。予算とどんなかかわりがあるのか。早速調べました。(山田英明)


概算要求の“天井”

 シーリング=「天井、天井板」。英和辞書を調べるとこう書いてありました。たしかに天井です。さらに調べると「限度額」という意味もあります。

 財務省主計局に聞きました。「シーリングですか。概算要求基準のことです」。応対してくれた担当者はこう答えました。

 「“天井”との関係ですか。『それ以上は出せません』っていうことですね。文字通り“天井”です」

 そういえば、福田内閣が七月二十九日、「概算要求基準」を閣議了解したという記事がありました。

 予算編成にかかわって語られる「シーリング」とは、予算の概算要求基準のことでした。

 概算要求とは、各省庁が、財務省に翌年度予算の見積もりを提出すること。例年八月末に締め切られ、財務省による査定などを経て、年末に向けて予算案が作られていきます。

 概算要求基準は、この見積もりの提出に先だって、財務省から各省庁に示される要求・要望の基本的な方針のことです。

61年度予算で導入

 では、そもそもシーリング(概算要求基準)という手法が導入されたのはいつでしょうか。

 「今ばたばたしていまして…」。本格化する予算編成作業の中、主計局の担当者は忙しそう。それでも、「はじめてシーリングという手法が取り入れられたのは、昭和三六年度(一九六一年度)予算と承知しております」と答えてくれました。

 「概算要求については水増し要求をやめて、できるだけ必要なものに限って要求し…」。大蔵省財政史室編の「昭和財政史」は、六〇年八月二日の閣議での水田三喜男蔵相の発言を紹介しています。

 六〇年度予算編成では、池田勇人内閣(当時)の「所得倍増計画」に刺激されて各省庁の概算要求が急増しました。『財政史』は大蔵省がシーリングを設定しようとした意図について「『所得倍増計画』の概算要求刺激効果を抑制しておくことにあった」と指摘しています。

抑制の標的は福祉

 概算要求の上限額を定めることで、野放図な予算の膨張を抑える目的があったシーリング。それでも、当時は「五割増程度の概算要求にとどめるよう」というものでした。

 小泉内閣以来の「構造改革」路線のもと、概算要求基準は、前年度予算額より抑制する「マイナスシーリング」が続いているのが特徴です。

 その最大の標的とされているのは、社会保障関係費の自然増。毎年二千二百億円もの抑制が、医療や年金、介護などの制度改悪として具体化されてきました。

 〇九年度予算の概算要求基準でも、その二千二百億円抑制の方針は相変わらず堅持されています。

 その一方、軍事費については対前年度1%減。米軍再編経費については「別途検討事項」と別枠扱いです。

 庶民向けの“天井”はどんどん低くなっていきます。

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