2008年8月5日(火)「しんぶん赤旗」

米兵犯罪

裁判権の放棄指示

日米密約裏付け 法務省が53年に通達


 米兵が「公務外」で起こした犯罪について法務省が一九五三年、日本側にある一次裁判権の大部分を放棄するよう指示した通達を出していたことが一九七二年に作成された同省のマル秘資料から分かりました。当時、日本側の一次裁判権放棄に関する日米間の密約が結ばれていたことは米政府の解禁文書ですでに明らかになっていましたが、これを具体的に裏付ける日本側文書が見つかったのは初めてです。

 通達は、米兵の「公務外」での犯罪について一次裁判権が日本側にあるという規定が一九五三年に行政協定に盛り込まれるにあたって法務省刑事局長が検事長、検事正あてに同年十月七日付で出したもの。同省刑事局が作成したマル秘指定の資料「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」(七二年三月)の中に「執務の参考に供する」ためとして収録されていました。

 通達は、日本側の一次裁判権の行使について「国際先例にかんがみその運用上極めて慎重な考慮を払わなければならない」と指摘。「日本側において諸般の事情を勘案し実質的に重要であると認める事件についてのみ右の第一次の裁判権を行使するのが適当」としています。つまり、「日本側にとって実質的に重要ではないもの」は一次裁判権を放棄するという内容です。

 このほか「実務資料」では、米側に一次裁判権がある「公務中」の犯罪の処理について、事件を起こした米兵の指揮官が発行する「公務証明書」は、「本件は公務中の犯罪である」との記載だけでも十分だとしています。

 また、「公務」には「軍慣習」が含まれ、「将校は、いかなる場合においても、下士官の軍紀違反行為を取り締まることができるという慣習がある」と説明しています。米側に都合のいいように「公務」と認定できるようにするものです。


 一次裁判権 優先的に裁判を行う権利。現行の安保条約(一九六〇年―)に基づき在日米軍の特権的地位を定めた日米地位協定は、米兵の「公務外」での犯罪については日本側に一次裁判権があると規定しています(一七条)。同規定は、旧安保条約(五二―六〇年)下の五三年、地位協定の前身である日米行政協定一七条の改正として盛り込まれました。



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