2008年7月30日(水)「しんぶん赤旗」

領内の米軍行動に反対

米大統領と対テロ問題など協議

パキスタン首相


 【ワシントン=鎌塚由美】訪米中のパキスタンのギラニ首相は二十八日、ホワイトハウスでブッシュ米大統領と会談し、対テロ問題を中心に協議しました。会談後、同首相は米CNNテレビで、パキスタン領内での米軍の一方的行動には反対だとブッシュ大統領に語ったと述べました。


 ギラニ首相は、同テレビのインタビューで、「われわれは過激派やテロリストとたたかうことを誓約している」とした上で、「この戦争はパキスタンに対する戦争であり、われわれは、われわれのためにたたかう」と強調しました。そして、パキスタン領内に対する二十八日の米軍のミサイル攻撃について「一方的にすべきでない」とブッシュ大統領に伝えたと述べました。

 首脳会談後、ブッシュ大統領はパキスタンが「強力な同盟国であり、活力に満ちた民主主義国」だと評価。パキスタンの主権に関し「この民主主義国家の主権を尊重する」と繰り返しました。

 ホワイトハウスのペリノ報道官は、対テロ問題が主題となった会談で「真剣な協議」が行われたとし、両国が「積極果敢に取り組まなくてはならない」と米国側が強調したことを明らかにしました。

 会談後発表された声明によると、両首脳は、対テロ分野でのパキスタンの軍事能力向上を目指す長期的安全保障関係の強化、アフガニスタン・パキスタン国境地帯での過激派掃討での協力などで合意しました。

 また、米側は対テロ戦での協力に対する見返りとして、今後二年間に一億一千五百五十万ドル(約百二十四億円)の食料支援、うち向こう九カ月間に四千二百五十万ドルの食料支援を実施するとパキスタンに約束しました。


解説

米、「対テロ戦争」協力を強要

 今回の首脳会談は、ブッシュ政権のアフガニスタンでの「対テロ戦争」が、反米勢力タリバンの復活のなかで破たんし、米国とパキスタン関係にも軋轢(あつれき)が生じているもとで開かれました。

 会談の数時間前には、米軍のものとされるミサイルがアフガン国境付近のパキスタン側の民家を直撃し六人が死亡したと報じられました。ホワイトハウスのペリノ報道官は首脳会談直後の会見で、このミサイル攻撃について執拗(しつよう)に質問する記者たちに回答を避け続けました。

 アフガン駐留米軍はこの間、「パキスタンの主権を尊重する」というブッシュ氏の今回の言明とは裏腹に、パキスタン側への越境空爆を繰り返してきました。六月にはパキスタン軍の駐屯地を「誤爆」、パキスタン兵十一人を死亡させ、パキスタン側から強い抗議が出されています。

 ブッシュ政権は二〇〇一年の9・11対米同時多発テロ後、多額の経済軍事援助と軍事的恐喝をもって対タリバン・アルカイダ戦争にパキスタンを協力させました。パキスタンは同国軍基地使用など米軍への協力に苦渋の選択として同意し、パキスタン軍も武装勢力掃討に従事してきました。

 しかしギラニ首相の言明にあるように、パキスタン領内での米軍自体の軍事活動については一貫して拒否しています。

 二月の総選挙で誕生したパキスタン新政府は、軍事作戦に依拠しテロが急増した数年来の経過から、アフガン国境方面のいくつかの地域で武装勢力との停戦を追求し協定を結びました。米軍は、パキスタンからアフガンへの武装勢力の越境が増えたとして、この動きを非難し、パキスタンに事実上、軍事的対応を求めています。

 米軍のアフガンからパキスタンへの越境空爆は、「パキスタンがやらないなら米軍がやる」というものです。

 対タリバン戦争の七年は軍事力でテロをなくせないことを示してきました。米国流「対テロ戦争」がパキスタン領内にももちこまれるなら、事態はいっそう重大となることは必至です。(小玉純一)


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