2008年7月19日(土)「しんぶん赤旗」

金融危機招いた野放し市場

EU規模の規制提言

首相・欧州委員長経験者ら14氏


 【ロンドン=岡崎衆史】欧州の首相、財務・経済相、欧州委員長経験者十四人が連名で、金融危機を招いた野放しの市場と投機行為を批判し、欧州連合(EU)規模で規制機関を設置するよう提言していたことが分かりました。提言は、食料とエネルギーへの投機についても、貧困や紛争を拡大すると警告しています。


 提言が盛られた書簡は、七月からEU議長国を務めるフランスのサルコジ大統領とバローゾ欧州委員長に渡されています。

所得格差拡大

 書簡は金融危機について、「不十分もしくは全く規制のない市場の失敗」「金融市場は自らの規制ができないことを改めて示している」と指摘。野放しの金融市場による「不適切な動機付けの仕組み、短期的利益の偏重、露骨な利害のぶつかり合いが投機取引を増大させてきた」と批判しました。

 投機が食料やエネルギーにも及び、生活必需品の価格を引き上げていることについては、「前例のない貧困、破たん国家の拡散、武力紛争の増大の危険がある」と警鐘を鳴らしました。

 また、「金融部門拡大とともに所得の格差が広がった」とし、世界各国の国内総生産(GDP)合計額の十五倍に達する金融資産が、「人道や環境分野でごくわずかな改善しかもたらさなかった」と批判しました。

 企業役員の高額報酬についても、「重大な倫理問題」だと指摘しました。

 さらに、「まっとうな資本主義は効果的な公共政策を必要とする」とし、市場万能主義の是正を求めました。

危機委設立を

 その上で書簡は、元政府首脳、元財務相、経済学者、金融専門家で構成されるEU規模の「欧州危機委員会」を設立するよう提言。同委員会が▽金融危機の分析▽解決策のEU閣僚理事会への提言▽国際金融や経済のルールを再検討するための「世界金融会議」の準備―を行うよう求めました。

 書簡は五月十九日付で、ドロール、サンテール両元欧州委員長、シュミット元西独首相、ジョスパン、ロカール両元仏首相、ペーション前スウェーデン首相、ダレーマ元イタリア首相、ラスムセン前デンマーク首相、リッポネン元フィンランド首相など、二人の元欧州委員長、七人の首相経験者、五人の財務・経済相経験者が名を連ねています。


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