2008年7月10日(木)「しんぶん赤旗」

人口密集地隣に病原体の実験棟

神奈川 武田薬品が計画

住民から不安の声


地図

 武田薬品工業(本社・大阪市)が神奈川県内の人口密集地のそばに計画している国内最大級の新薬研究所をめぐり、周辺住民の間から「汚染物質が漏れることはないのか」と不安の声があがっています。

 予定地は藤沢、鎌倉両市にまたがる同社湘南工場跡地。JR東海道線の沿線で、二十五ヘクタールの広さです。計画では四十三メートルの高さの実験棟が十五も立ち並び、うち三棟は危険度の高い病原体の扱いが可能な「P3施設」です。

 武田薬品は住民に対し、危険な病原体を使う研究は当面行わないが、将来的にはありうると説明。研究所内の水と空気は、一定の処理をした上で外部に放出するとしています。

 同社は「安全性に問題はない」と強調していますが、その科学的根拠は示されていません。

 また、県に同社が提出した環境アセスメント案では、「水質汚濁」が調査項目から外されているなど安全を軽視した内容となっています。

 神奈川県が五日、藤沢市で開いた環境影響予測についての公聴会でも、公述人から「危険物質が除去される保証があるのか」「新薬研究の意義は認めるが、研究所の安全性確保が前提」などの声が続出しました。

 現在、神奈川県や藤沢、鎌倉両市には、バイオ・遺伝子組み換え生物を扱う施設の建設や運用を監視・規制するための条例はありません。

 鎌倉市で学習会などをすすめている男性(68)は「病原体や危険物質の流出が心配される新薬開発施設は、人口密集隣接地に建設するべきではありません。県や市には、住民の安全を守る条例の制定を求めていきたい」と話しています。


 P3施設 「P」は「Physical containment (物理的封じ込め)」のPを表し、「3」は「最高水準の物理的機密性を完備した実験施設」のレベルをあらわします。


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