2008年6月29日(日)「しんぶん赤旗」

主張

最新型クラスター

全面禁止の願いを無にするな


 クラスター爆弾禁止条約に同意しておきながら、防衛省の来年度概算要求で最新型のクラスター爆弾の導入をめざす動きがでています。

 増田好平防衛事務次官は二十三日の記者会見で、最新型クラスター爆弾の導入を否定せず、「検討中」だとのべています。禁止条約を締結しないうちから、現有のクラスター爆弾を最新型に置き換える動きは見過ごせません。最新型の保有をめざすのは全面禁止の願いに背くことです。全面禁止をめざす国からの非難は避けられず、日本への不信がさらに強まるのは必至です。

最新型導入の動き

 国際的に合意したクラスター爆弾禁止条約は、一部の最新型爆弾を禁止の例外にしたとはいえ、六十カ国近い国が持っている爆弾の99%をなくす力をもっています。非人道的残虐兵器をなくすことが眼目のこの条約は、保有国を全面禁止においこむうえで大きなテコになります。

 日本も禁止条約に同意しました。条約を締結すれば、航空自衛隊と陸上自衛隊が二百七十六億円もかけて保有しているぼう大な数のクラスター爆弾を全廃しなければなりません。条約を早期に締結して、自衛隊のクラスター爆弾を速やかに廃棄させる必要があります。

 国際社会の全廃の願いに反して、条約の禁止例外規定を使って最新型のクラスター爆弾を導入しようという動きは、政府・防衛省にクラスター爆弾を全面禁止する気持ちがないことをうきぼりにしています。

 禁止条約は、親爆弾内の子弾は十個未満で、重さが四キログラムを超えるもの、目標物探知機能、電子的自爆装置、電子的な自己無力化機能を備えた最新型爆弾は禁止の例外にしています。しかしそれは、全面禁止を求める諸国が、五月のダブリン(アイルランド)会議で禁止条約案を何としても成立させ、全面禁止につなげたいという熱い思いからの譲歩によるものです。例外規定をいいことに、最新型を導入するのは、条約に託された全面禁止の願いを無にし、条約の意義を薄めることにしかなりません。

 福田康夫首相は、禁止条約に合意したダブリン会議の直後の国会(九日)で、現有のクラスター爆弾の「補完」措置を検討するとのべました。石破茂防衛相もクラスター爆弾を「遊びや冗談でもっているわけではない」と力説して「心しながら対応」するといいました。二人の発言の狙いが最新型クラスター爆弾の導入にあるのはあきらかです。

 もちろん、最新型であっても民間人を殺傷することに変わりはありません。NGOの「クラスター爆弾連合」も、「自爆装置を備えた新世代のクラスター爆弾であっても、不発に終わることが多く、とても容認できない人的被害をもたらす」と指摘しています。アメリカがつくる最新型爆弾は不発弾として残る率が「1%以下」といわれますが、わずかであろうと不発弾になった子弾が子どもなど民間人を殺傷するのを許していいはずがありません。

全面禁止をめざせ

 政府は、日本は海岸線が長く、上陸した敵を攻撃するためにクラスター爆弾が必要だといいます。しかし「防衛計画の大綱」は「侵略事態生起の可能性は低下」といっています。政府の言い分は通用しません。

 いま大事なのは、非人道的残虐兵器であるクラスター爆弾をなくすことです。戦争を禁止した日本が進むべき道は、クラスター爆弾の全面禁止以外にありません。


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