2008年6月17日(火)「しんぶん赤旗」

「牛肉」・スト 韓国政府動かす

労働者への分配増を

与党 「社会的市場主義」主張


 韓国政府と与党は十五日、原油高騰による燃料値上げなどで収入が激減した韓国のトラック輸送運転手労組「貨物連帯」のストライキ入りへの対策を協議しました。与党側は憲法を根拠にして、企業が労働者への利益の分配を高めることなどで応分の社会的責任を果たす「社会的市場主義」を主張。韓国メディアは「企業寄り政策を自認してきた李明博(イ・ミョンバク)政権の変化」と注目しています。


 韓国では先週から、トラック運転手に続き自動車・建設労組なども相次いでスト入り。政府・与党の協議では、労働者や中小・零細企業へのしわよせで利益を上げている企業の行動を改めさせるべきだとの意見が与党側から出たといいます。

 政府・与党協議後に記者会見したハンナラ党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)院内代表は「憲法は自由主義的な市場経済ではなく、『社会的市場主義』を明確にしている」と強調。「韓国通貨の対ドル為替レートが百ウォン(約十・四円)下がれば、財閥は兆単位の利益を上げる。これを庶民に戻す共生共存の仕組みが必要だ」と述べました。

 李政権の支持率は米国産牛肉の輸入再開問題を発端に急落。背景には、庶民生活の悪化にもかかわらず、企業への規制緩和、市場開放、公営企業の民営化など企業重視政策を優先してきた政府への不満があります。

 各メディアは、閣僚・大統領側近の交代に加え、政策の転換で国民の信頼回復を図ろうとしていると伝えています。

 「貨物連帯」の要求は燃料負担への補助金引き上げや、個人事業主がほとんどのトラック運転手に最低賃金相当の収入を保障する制度確立など。運送業は下請け、孫請けによって、運転手が受け取る手数料の30―40%が「ピンはね」されているといいます。ストには労組に加入していない運転手も続々と加勢しており、労働者の不満の強さを示しています。

 洪院内代表は会見で「政府は『貨物連帯』がスト入りした切実な背景を考慮すべきだ」と指摘。同席した任太熙(イム・テヒ)政策委員長も「『貨物連帯』と荷主の関係を『自律』だけに任せておくことが、公正なことだろうか。制度的・法的な補完が必要だ」と述べました。(面川誠)


 韓国憲法の経済条項 1987年に軍事独裁が倒れた後に制定された韓国憲法の第119条は「国家は均衡ある国民経済の成長および安定と適正な所得の分配を維持し、市場の支配と経済力の乱用を防止し、経済主体間の調和を通じた経済の民主化のために、経済に関する規制と調整を行うことができる」と明記。憲法裁判所は96年、「韓国の経済秩序は自由放任的な市場経済秩序を意味しない」との判断を示しました。


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