2008年6月17日(火)「しんぶん赤旗」

主張

保育の制度改悪

いったいどこが子育て支援か


 保育所入所児童が毎年増えつづけるなかで、公立保育所は統廃合や民営化でこの十年で千六百カ所も減らされています。

 こうしたなかで、政府と財界が一体になり、保育の「市場化」へ制度的な決着をつけようと、新たな提言にそって「結論を出す」(福田康夫首相)保育制度改悪の重大な動きがすすんでいます。

シナリオは財界

 日本保育協会の調査では二〇〇四年に公立保育所の国庫負担金が一般財源化された結果、六割の市区が保育所運営費を減らしています。大阪では、半数の自治体で非正規保育士が五割を超えています。全国には、雨漏りする施設、耐震基準に満たない施設も放置されています。保育所待機児が二万人近くにのぼる深刻な事態の解決は待ったなしです。

 子育て支援の地域の要として保育所の役割が大きくなっています。公的保育制度を根底から崩す「企業参入」は国民の保育要求解決の方向にまったく逆行しています。

 この間、経済財政諮問会議の民間議員や規制改革会議などからの提言があいつぎました。少子化で減る労働力を女性の就労で補うために、保育の「規制緩和」と「市場化」で、「メニューの多様化と量的拡大」を図れというものです。

 それは、保育分野にお金をかけず、市場開放が可能となるよう最低基準などの歯止めを緩め、いろんな施設に直接申し込めるよう「選択の自由」にするというものです。

 五月に厚生労働省社会保障審議会少子化対策特別部会は、自治体が責任をもって子どもたちを認可保育園にいれる現制度から、保育園と保護者の「直接契約」制度の導入を提言しています。

 児童福祉施設としての保育所は、法の基準にもとづき、公共サービスとして住民に等しく保障されるものです。地方自治体は、保育に欠ける児童を保育所で「保育しなければならない」のであり、保護者の入所希望を受け付け、保育料は親の所得に応じて決められています。それによって、所得の差で差別されずに、保育を受ける権利が保障されています。

 直接契約の導入によって、保育が「もうけ優先」の「市場」にゆだねられるとどうなるでしょうか。

 コスト競争による人件費削減で非正規保育士の増加や「よい保育を望むなら負担は当然」と、保育料の大幅引き上げに歯止めがなくなります。施設間格差が拡大し、父母の所得や負担能力による、保育所の選択がすすむでしょう。ひとり親家庭、低所得世帯や障害児の保育が排除される恐れも否定できません。

 大商社の伊藤忠会長が責任者の地方分権改革推進委員会は、保育所施設や職員などの国基準をなくし、市町村独自で決める方向も検討しています。“地方の裁量権の拡大”などではなく、国の最低基準の縛りをとりはらい、保育の地域格差を容認するものです。国の基準をなくすことは国の責任を放棄することです。この改悪の最も深刻な犠牲になるのは幼い子どもたちです。

保育市場化にストップを

 現在の子育て世代はもちろん、未来の子育て世代は、仕事にも家庭・子育てにも希望がもてる将来を切実に願っています。その制度的な保障の一つが公的保育制度の充実です。

 日本共産党は、政府・財界による保育制度の改悪、「市場化」の流れにストップをかける国民的なたたかいの発展をよびかけ、ともに力をつくすものです。


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