2008年6月16日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

私学助成カットやめて

高校生が立ち上がる

大阪府


 国民に犠牲を押し付ける「構造改革」がすすめられ、「貧困と格差」が広がるもとで、私学の負担が重く学業を途中であきらめざるをえない事態が起きています。財政難を理由に私学助成の削減も行われています。「安心して学べるように勉学条件の改善を」「私学助成を削減しないで」との思い、運動を紹介します。


 「夢は福祉士になること。なのに助成金を減らされると、学校に行けなくなるかもしれません。考え直してください」「お金のせいで友達との思い出がつくれなくなるなんて、めっちゃ悲しい」―。高校生が学校や休日の駅頭で集めた、橋下徹大阪府知事へのメッセージカードです。中高生らの率直な声が一カ月半余りで、目標を上回る二千九十七人分寄せられました。

知事に“意見聞いて”

 “財政再建”を名目にした橋下知事が一方的に示した、私学助成を大幅削減する方針に対し、撤回させようと活動に取り組んだのが「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」です。保護者や大阪私学教職員組合が年一回開催している「大阪私学デー」の生徒実行委員会メンバーら、私・公立合わせ三十四人の高校生が四月下旬に結成。「私たち高校生の意見を聞いて!」と、メッセージカードを募る運動が府内の各私立高校に広がりました。

 府南部に位置する河内長野市内の私立千代田高校では、生徒会が先頭に立ち、ホームルームの時間に校内放送で呼びかけました。全校生徒の八割近い五百五十人が、それぞれの思いをつづります。学校や駅頭で「手当たりしだいに呼びかけた」という三年生の女子生徒(18)は、リストラにあった親の再就職で、収入が不安定な状態が続いているといいます。「学校に通うのを、どうしても申し訳なく思ってしまう。お金がなくたって学びたい。学ぶ権利が本当に保障されているのか、すごい疑問」だと語ります。

 府内のクリスチャン系の私立高校でも運動の輪が広がり、橋下知事あての要望はがきを学校ぐるみで集め、提出しています。

 一方、橋下知事は五日発表した「大阪維新プログラム」案で、あくまで教育現場に負担を押し付ける意向を示しました。私立学校の運営費助成を25―5%削減する方針。一人あたりの助成水準は中学校で全国最低になり、二〇〇七年度に四十五位だった高校は、さらに順位を下げる見込みです。授業料軽減助成についても所得制限が強化され、年収八百万円から五百四十万円までの世帯で、年十二万円の負担増になります。

 「授業料の値上げにつながる」との懸念が広がるなか、大阪市内の私立高校の校長は「子どもも親も泣いている。知事はまったく現場を知らない」と批判します。「授業料が払えずに退学する生徒が増えている。先日発送した未収納分の督促状は百数十件にもなる」と明かしたうえで、「教職員の一時金削減もしてきた。これ以上カットしようがない。しかし授業料を上げるのは難しい」と、苦渋の色をにじませました。

メッセージ募り提出

 メッセージカードを府担当職員に手渡した九日夕、府庁玄関前に府内各地から集まった高校生らは二百五十人にのぼりました。「高い授業料を払うために、学校が終わったら部活でなくバイトに行く高校生がたくさんいる」「大阪の借金を、子どもや教育現場に押し付けないで」と、思いの丈をぶつける声が響き渡りました。「削減案が実現すれば全国に広がる」と、京都、兵庫の高校生や大阪府立高の生徒の姿も。

 参加した三年生の女子生徒が通う府南東部の府立高は、府教委が進める統廃合の方針により来年度から合併されます。「公立高は統廃合でなくなるわ、私学助成は削減しようとするわで、まるでお金のない子は高校来るなって言ってるようなもの。私学のお金はバカ高いのに、なんか削るところが間違っている」と声を大にしました。

 「笑顔をくださいの会」代表(私立高校三年生)は、「カードを集めるなかで、授業料が払えず学校をやめるなど悲しい体験をした子が何人もいることを知りました。そんな友達を、これ以上増やしたくない。この財政再建は、さまざまな人の意見を聞かずに決めてはいけない」と訴えます。

 「笑顔をくださいの会」は、知事との直接面会を求め、七月議会での要請行動に向け、さらにメッセージカードを集めています。(松田 大地)


「世界一高い学費」を軽減

日本共産党が提言

 日本共産党は「『世界一高い学費』を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくすために」の提言を四月に発表しました。

(1)公立高校の授業料減免を広げる。私立高校の授業料を減免する「直接助成制度」をつくる

(2)国公立大学の授業料減免を広げる。私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくる

(3)国の奨学金をすべて無利子に戻し、返済猶予を拡大する。経済的困難をかかえる生徒・学生への「給付制奨学金制度」をつくる

(4)「学費の段階的無償化」を定めた国際人権規約を批准する

 日本国憲法は国民に「ひとしく教育を受ける権利」(第二六条)を保障し、教育基本法は、すべての国民は経済的地位によって「教育上差別されない」としています。

 この提言を実現するための経費は年間約千九百億円です。政府がやる気にさえなれば、ただちに実行可能なものであり、国民的な運動で実現させようと各地で宣伝・対話、懇談をすすめています。


来月5日にシンポ

全学連

 「高い学費をなんとかしてほしい」と各地で学費値下げの運動が行われています。

 京都では、6つの大学の学生自治会が加盟する京都府学連が2007年7月に個人加盟の「学費ゼロネット」を発足させました。商店を訪問し、学費無償化を訴えるポスターを張り出し、議会要請、学内や街頭で宣伝しています。

 ことし5月30日には、「学費ZERO(ゼロ)ネット東京」が結成されました。東京都学生自治会連合が中心になって都内の学生に加盟を呼びかけています。学費の負担軽減や国庫予算の増額を求める個人加盟のネットワークです。大学での宣伝やアピールウオークにもとりくんでいます。

 「全国学生アンケート2008」を行っている全日本学生自治会総連合(全学連)は、7月に国会要請、「学費・教育費シンポジウム」を東京で開くことにしています。

◇日時 7月5日午前10時から学習会。午後1時30分からシンポジウム

◇場所 東京大学駒場キャンパス 前日の4日には、学生の切実な実態や思いを直接国会に届けようと国会要請にとりくみます。

 「アンケートや一言カード、黒書、署名など声をもちよって、大きく成功させて、高学費問題の世論を広げ社会を動かすきっかけに」していこうと呼びかけています。

 問い合わせ=全学連042(572)6011



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