2008年5月22日(木)「しんぶん赤旗」
南京大虐殺 生存者が勝訴
二審も名誉棄損認める
侵略美化 教授らに賠償命令
東京高裁
日本軍が起こした南京大虐殺事件で生き残った中国人女性が、『「南京虐殺」の徹底検証』という著書で「偽の被害者」と記述され、名誉を棄損されたとして千五百万円の損害賠償などを求めていた訴訟の控訴審判決が二十一日、東京高裁でありました。柳田幸三裁判長は名誉棄損を認めた一審判決を支持し、著者の東中野修道・亜細亜大学教授と出版社「展転社」(東京都)に四百万円の支払いを命じました。
原告は一九三七年の事件発生当時、家族七人を殺され、自身も銃剣で刺されたという夏淑琴さん(78)=中国・南京市=。昨年十一月の一審判決を受け、原告、被告ともに控訴しました。
控訴審で東中野教授側は、米国人宣教師が虐殺現場を記録したフィルムは夏さんの事件とは「別件」でねつ造されたものと主張。フィルムの解説文は宣教師の「創作話」で、「八歳の少女」は「空想の産物」なので、実在する夏さんとは別人であり、記述は名誉棄損にあたらないと新たな主張を展開しました。
判決は、一審の口頭弁論などで被告の著者らが解説文の内容や「八歳の少女」の存在を認め、東中野教授もその趣旨の陳述書を作成していたと指摘。被告側の主張は「採用できない」として棄却しました。
記者会見で原告側弁護団は「一審判決を維持したことを評価する」とのべました。
同弁護団は声明で、日本の侵略戦争を美化する勢力を批判。「過去と向き合い、事実をありのままに受け入れることからしか、侵略の歴史への反省はありえないし、真のアジアの平和の構築も実現しない」と同訴訟の意義をのべています。
中国で判決を聞いた原告の夏さんは「今日の勝訴は大変感動した」「私一人だけではなく、南京大虐殺被害者を代表し、事件の事実が認められたことを心からうれしく思う」とコメントを寄せました。
中国の弁護士は「本日の勝訴は歴史の事実を抹殺することはできないことを改めて証明した」とコメントしました。