2008年5月21日(水)「しんぶん赤旗」

シリーズ 廃止しかない 後期高齢者医療制度

前例ない年齢差別法


 後期高齢者医療制度を撤廃するための国民的共同を呼びかけた日本共産党のアピール(八日)に、賛同・共感が広がっています。政府・与党がもくろむ「小手先の手直し」ではなく、制度は廃止するしかない理由をシリーズでみていきます。一回目は、「高齢者差別法」の実態です。(随時掲載)


憲法に反する「制度」

 福田康夫首相は後期高齢者医療制度について「制度そのものは悪くない」などと述べ、あくまで存続を狙っています。

 しかしこの制度は、前例のない異常な「高齢者差別法」です。七十五歳になったとたんに「後期高齢者」のレッテルを張り、差別医療を押し付けるという「年齢差別」医療制度は、世界に例がありません。

 なにより、日本国憲法に違反する制度です。年齢によって医療を差別することは、「法の下の平等」を規定した憲法一四条に反します。また、わずかな年金収入しかない人から保険料を天引きで取り立てることは、「生存権」を保障した憲法二五条に反します。

 厚生労働省OBで大阪大学教授の堤修三氏は、「少なくとも国は(社会保障などの向上に努めなければならないとする)二五条二項の努力義務を果たしていないとの批判は免れまい」(『週刊社会保障』四月十四日号)と指摘します。

 今年七十五歳になる人は、一九三三年生まれ。十二歳という多感な時に敗戦を迎え、悲惨な空襲体験のある人や、肉親の多くを戦地で失った体験を持っている世代です。

 同時に、戦後の国民皆保険を支えてきた世代でもあります。二十八歳のとき(六一年)に国民皆保険制度が確立し、四十歳のとき(七三年)には老人医療費が無料化されました。現役時代は、高齢者の医療にしっかり貢献してきたのです。

 その人たちが、いざ年をとり、病気になるリスクを抱えたとたん、それまで入っていた医療保険から切り離され、「高齢者も応分の負担を」と高い保険料負担を強いる――こんな理不尽な制度はありません。

 自民党の大臣経験者などからは、高齢者を「邪魔者扱い」し、家族を破壊することに厳しい批判が出ています。(別項)

 そもそも、年齢で差別することは時代遅れです。厚生労働省自身も「一律に物事を年齢で輪切りにする既成概念を見直すことは急務」という報告書(人生85年ビジョン懇談会、五月)をまとめています。


おもな高齢者への増税と社会保障改悪
2003年4月 受給者の年金額を物価スライドで初めて減額
        介護保険料引き上げ
2005年1月 所得税の公的年金等控除を縮小、老年者控除廃止
     6月 介護保険改悪法成立
    10月 障害者自立支援法成立
2006年4月 介護保険料引き上げ
     6月 住民税の公的年金等控除を縮小、老年者控除廃止、
        高齢者の非課税限度額廃止
        医療改悪法成立
2008年4月 後期高齢者医療制度スタート


健康より医療費削減

グラフ

 政府・与党は「高齢者をみんなで支える仕組み」などと、必死に宣伝しています。しかし、法律の狙いはまったく違います。

 新制度の根拠になる法律は「高齢者の医療確保法」。〇六年の医療改悪法で、それまであった「老人保健法」(一九八二年)を廃止して制定されました。この時、老人保健法第一条にあった「国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保」は全面削除。代わって、「医療費の適正化を推進する」と明記しました。

 「健康よりも医療費抑制」ということが制度の精神なのです。実際、厚労省の担当者は「この制度は、医療費が際限なく上がっていく痛みを後期高齢者がみずから自分の感覚で感じ取っていただくものだ」と講演(一月、石川県)で説明しています。

 同省の試算では、二〇一五年度に予定している三兆円の医療費削減のうち、二兆円は七十五歳以上の分です。二五年には、全体で八兆円の削減額のうち、七十五歳以上の医療費削減が五兆円を占めます(グラフ)。医療費削減のために、高齢者を狙いうちにする制度であることは明らかです。

相次ぐ高齢者いじめ

 この間、自民・公明政権は、所得税と住民税の老年者控除の廃止など、高齢者に大増税を押し付けてきました。さらに年金の減額、介護保険の改悪など、相次ぐ社会保障の改悪で痛めつけてきました(年表)。

 そのうえ、命にかかわる医療の分野で導入された高齢者差別の後期高齢者医療制度。一刻もつづけさせるわけにはゆきません。(秋野幸子)


廃止求める3理由

(1)医療費削減のための高齢者差別法は許されません

(2)制度は存続すればするほど、国民を苦しめます
 ・保険料は「天井知らず」に値上げされる
 ・差別医療が導入され拡大される

(3)すべての世代に重い負担と医療切り捨てを押しつける制度です(共産党アピールから)



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