2008年5月18日(日)「しんぶん赤旗」

74年米兵住民狙撃

米が圧力 裁判権奪う

世界駐留への悪影響懸念

米解禁文書で新原氏が公表


 一九七四年の米兵による「伊江島住民狙撃事件」で当初、「公務外」の事件として日本側に裁判権を譲っていた米側が、突如、「公務中」だったとして日本側から裁判権を取り上げた詳細な経過が、米政府解禁文書で分かりました。米軍の特権的地位を定めた日米地位協定の下で、米側が「公務証明書」を恣意(しい)的に発行すれば、日本側から裁判権を奪える仕組みになっていることを示すものです。

 解禁文書は、国際問題研究者の新原昭治氏が三月から四月にかけて米国立公文書館で入手したもの。十七日に都内で開かれた日本平和委員会主催の学習会での講演で明らかにしました。

 日米地位協定は、米兵が犯した罪が「公務中」であれば裁判権を行使する第一次の権利は米側にあると規定しています(一七条3項a)。「公務中」との認定は、米軍指揮官が「公務証明書」を発行すればいいだけです。

 「公務証明書」に対し日本政府が過去に反証したことがあるのはわずか二例。その一つが伊江島住民狙撃事件です。

 新原氏が入手した同事件に関する米政府解禁の外交電報によると、沖縄県内でわき上がった事件への抗議運動を沈静化する狙いもあり、米側は当初、「公務証明書」を発行しないと日本側に通知しました。

 ところが米側は、国務長官発の緊急電で「国務省・国防総省共同メッセージ」を伝え、「どうしても『公務証明書』を発行しなければならない」と逆転決定。「米国内の事情」と「もし裁判権を行使し損なったら、その影響は米国が他の国々と結んでいる一連の地位協定にまで及び、…米軍要員の士気にも及ぶ」ことを理由にしました。

 日本に駐留する第五空軍は、緊急電を受け、事件の筋書きを書き換えて「公務証明書」を発行します。日本側は当初、「政治的しっぺ返しを受ける」(木村俊夫外相)として証明書発行の再考を要請。米側に拒否され、最終的には秘密の日米覚書をつくり、米側に裁判権があることを確認しました。

 刑事裁判権の問題は、現在でも米軍軍法会議で有罪になる事案が日本で不起訴になるなど重大な問題をはらんでいます。


 伊江島住民狙撃事件 一九七四年七月十日、沖縄県・伊江島の米軍補助飛行場内で米兵が草刈り中の青年を狙撃した事件。畜産の飼料のための草刈りは米側も黙認していたにもかかわらず、米兵がトラックで追い回し信号用の銃で狙撃し、負傷させました。日本政府が裁判権を放棄、被害者補償もされませんでした。



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