2008年5月11日(日)「しんぶん赤旗」

公務員制度法案

政官業の癒着・無責任行政――これで改革できるのか

衆院本会議 塩川議員の質問(要旨)


 衆院本会議で九日、国家公務員制度改革基本法案が審議入りし、日本共産党の塩川鉄也議員が質問に立ちました。要旨は以下の通りです。


 今回の公務員制度改革基本法案は、政・官・業の癒着構造や無責任な行政運営を改革するものになっているのでしょうか。具体的にお聞きしたい。

官民交流の拡大

 第一に、「政・官・業の癒着構造」の問題です。

 昨年、安倍内閣の下で『天下り自由化法』が成立させられました。今回の法案では、「官民の人材交流を推進する」「官民の人材の流動性をたかめる」と称して、国と民間企業との間で幹部職員の交流を拡大しようとしています。これで公務の中立・公正が担保できるのですか。官と業の癒着を拡大するだけではありませんか。天下りの規制強化こそ、求められているのではありませんか。答弁を求めます。

 もともと、官民の交流の拡大は、財界が求めてきたものです。なぜでしょうか。

 総務省が日本経団連に行ったアンケートによれば、企業側は、人材交流のメリットとして、「社員の知見・人的ネットワークの拡大等」をあげています。まさに癒着の構造を広げるためではありませんか。

 実際、官民人材交流推進会議の報告でも、「官民人材交流」については、民間企業の側からも「官民癒着であるとの社会的批判を惹起(じゃっき)する」との声がでており、総務省も民間企業に「メリットがあるような交流には、官民癒着の批判の恐れ」があると指摘しています。

 一例をあげれば、内閣府原子力安全委員会事務局の規制調査官のポストは、原発メーカーである三菱重工業、三菱電機、日立製作所の「指定席」となっています。原発を開発・製造する企業が、その安全性をチェックする政府の機関をおさえている、誰が見ても癒着そのものではありませんか。

 法案には、こうした癒着への「歯止め」はいっさいありません。国民から「官民癒着の批判」をうけることは、明らかではありませんか。答弁を求めます。

監視機能封じる

 第二に、国民の安全・安心をないがしろにした行政の無責任体質の問題です。

 この間、社会保険庁の「消えた年金問題」、道路特定財源を食い物にした数々の無駄遣い、建物、交通、食品の偽装問題があいつぎました。このような事態を引き起こした責任はどこにあるのでしょうか。

 自民党の社会保障・福祉軽視の政治が「消えた年金問題」をうみだし、あいつぐ規制緩和をすすめる政治が国民の安全をないがしろにしてきたのです。まさに長年にわたる自民党を中心とする政権与党に第一義的責任があるのであり、すべて官僚の責任にすることは許されません。

 官僚と行政にたいしては、行政情報の開示による国民の監視を高め、国会の行政監視機能を強化することこそ求められています。

 この間、道路特定財源、年金、後期高齢者医療制度など、政権与党と官僚がすすめた政治の問題点や無駄遣いが明らかになりました。これは、国民の監視とともに、野党の追及によって国会の行政監視機能が発揮された成果であります。

 ところが今回の法案は、「議院内閣制の下での国家公務員の役割」を喧伝(けんでん)し、その目玉として「政務専門官」以外の国家公務員が国会議員に接触することを規制するとしています。これは、国会による官僚への監視機能を封じ、行政情報の透明化に逆行するのではありませんか。

 また、内閣総理大臣を補佐する「国家戦略スタッフ」、大臣を補佐する「政務スタッフ」職を導入するとしています。さらに、人事庁を設置し、幹部職員の内閣による一元管理をうちだしています。これらは、国民に奉仕すべき公務員を、官邸と政権与党に奉仕するものに根本的につくりかえようというものではありませんか。答弁を求めます。

基本権回復せず

 第三に、公務員の労働基本権の問題です。

 公務員の労働基本権は、日本国憲法で保障された権利です。それをはく奪した占領下の政令二〇一号を踏襲する国家公務員法のもとで六十年にわたって踏みにじられてきたものです。ILO(国際労働機関)が国際労働基準に反するものとして繰り返し是正を求めてきた緊急の課題です。

 公務労働者の労働基本権回復を速やかに行うことは、公務員制度改革の要の問題です。なぜ、法案に、基本権の回復を明記しなかったのですか。

 政府の行政改革推進本部専門調査会も、非現業公務員の労働協約締結権については、付与する方向を打ち出し、「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」の報告でも、「労働基本権の付与については、専門調査会の報告を尊重する」としています。ところが法案では、この労働協約締結権についても「検討」するというにすぎません。なぜ、後退したのですか、明確な答弁を求めます。

 公務員が全体の奉仕者として働くうえで、労働条件の改善は不可欠です。

 法案は、「仕事と生活の調和を図ることができる環境を整備する」といいながら、国家公務員の仕事と生活の調和を破壊している最大の元凶であるサービス残業の根絶をなぜ明記しないのですか。サービス残業が犯罪であるという認識はないのですか。また国家公務員にサービス残業・不払い労働がまん延しているという実態をどう把握しているのですか。答弁を求めます。

 また「官製ワーキングプア」と言われる非常勤職員の問題もいっさい触れられていません。非常勤職員は、労働基準法も労働組合法も適用されないという、まさに法の谷間に放置されています。国がこうした無権利状態を放置することは断じて許されません。


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