2008年5月8日(木)「しんぶん赤旗」
変わる「墓」事情
注目される共同墓
自然志向に共鳴も
人々の意識の変化や環境問題も絡んで「墓」をめぐる状況も変わりつつあります。キーワードは「継承」や「自然」です。
葬送を考える市民団体エンディングセンター代表の井上治代さん(東洋大教授)は、今後の墓の方向性として、脱継承、自然志向、個性化と新しい共同性をあげます。
人口の都市集中や核家族・少子化などを通して目立ってきたのが継承の問題。「高額の墓地を買ったけれど後継ぎがいない」「子や孫に負担をかけたくない」という悩みが増えています。
寺による永代供養墓などの試みを経て、最近注目されているのが年金者組合や生活と健康を守る会など運動団体の「共同墓」。民医連系病院の「友の会」や映画人の共同墓もあります。
昨年十一月、市内の分譲墓地に建てた全日本年金者組合所沢支部(埼玉県)の共同墓。十二平方メートルの区画に「ともに歩む」と刻んだ自然石。単身二十万円、夫婦三十万円と、費用も安く、共同化による省スペース化にもなります。
年二回の合同追悼行事のほか、宗教自由で個人の追悼行事も可能。開設時の入会希望者は五十人を超し、その後も問い合わせが続いているといいます。
九年前、岩手県一関市の山中に誕生した「樹木葬」墓地は、いわば脱継承に「自然」を加えたものです。許可された墓地で、墓石の変わりに木を植える。植樹と適切な手入れによる里山再生のねらいもありました。遺骨はつぼから出して、和紙でくるむなどして直接埋蔵します。自然に帰るという考えです。
こんな理念に共鳴する寺や自治体が各地に誕生。横浜市も市営墓地に樹木葬エリアを開設し、東京都も検討中だといいます。
広い用地を確保しにくい都市部でも樹木葬を、という願いから始まったのが都市型樹木葬です。シンボルになる大きめの木を植えその下を芝生で覆い(一部通路)区画に分ける。エンディングセンターが東京・町田市の分譲墓地内に開設した「桜葬」墓地が草分けになりました。井上代表はこれを「一株の樹木のもとで眠る集合墓」と位置付けています。
同センターは最初の桜葬墓地(EN21)に続き、同じ分譲墓地内に東大景観研究室設計で会員外も利用できる「宙(そら)」と会員向けの「木立」を開設(宙のシンボル樹は桜でなく常緑樹のソヨゴ)。百七十五平方メートルの「木立」は一人用区、二人用区、家族(五人)区のエリアに分け、永代使用料はそれぞれ、四十万円、七十万円、百万円(他に年会費など)で、年二回合同追悼行事・桜葬メモリアルを実施しています。
定められた墓地外の場所で節度ある方法で行う「散骨」(葬送の自由をすすめる会は、「墓地葬」に対置して「自然葬」と呼称)への関心も広がっています。