2008年4月29日(火)「しんぶん赤旗」

定数1で共産党勝利

高齢者医療差別 住民の怒り 託された


埼玉県議再選挙

自民票半減 三つ巴制す

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(写真)市民と勝利を喜び合う山川さん=28日、埼玉県ふじみ野市

 二十七日投票の埼玉県議再選挙(西5区)で定数一を自民、民主両候補と三つ巴(どもえ)で争った日本共産党の山川寿美江(すみえ)さん(65)は、自民党候補を六十八票差で振り切り、議席を獲得しました。一年前の県議選(いっせい地方選挙)の得票から、山川さんは千二百票、27%伸ばし、対する自民はほぼ半減。劇的な民意の変化を受け、日本共産党はこの地域で三十三年ぶりに議席を獲得し、県議会の党の議席を複数にしました。

万歳の自民ぼう然自失

 開票を終えた午後十時二十分、選挙管理委員会が結果を読み上げた瞬間、凍りついたのは自民、民主の陣営でした。直前に「勝利」の情報が流れ、万歳をすませていた自民はぼう然自失。ふじみ野市役所に近い山川候補の事務所は、支持者より早く新聞や、地元テレビの取材陣でごった返し、続々とつめかける支持者と一緒に「万歳」の声が突き抜けました。

 男性(62)は「後期高齢者医療制度に対する怒りが燃え上がりました。山川さんは町議・市議として三十六年間、誠実に市民のために頑張ってきたことが信頼されたと思います」と語りました。

 選挙は、前回県議選の際の買収事件で逮捕された元自民党県議の失職が最高裁判決で確定したのを受けて実施されました。

 第一声で「自民党のともしびを消すな」「山口県の衆院選挙、そしてこのふじみ野が日本の政治を占う大切な選挙だ。命がけでたたかっていく」と檄(げき)を飛ばす自民陣営。「クリーンな政治を」「次の総選挙で政権交代となるよう死にもの狂いで頑張る」と民主陣営。双方が国会議員を次々動員し、民主は最終盤、菅直人代表代行が入ってテコ入れをはかり、自民党は渡辺喜美金融担当相をつぎ込んで対抗しました。

 これに対し、日本共産党は清潔な政治を貫く党の姿を訴えるとともに、お年寄りらの医療に差別と負担増をもちこむ後期高齢者医療制度への怒りを受け止められるのはどの党、どの候補者なのか、審判を求めました。

 年金からの保険料天引きが始まった四月十五日から相次いだ市役所への苦情、問い合わせは一日五十件にものぼりました。「自公政権が決めた後期高齢者医療制度」に、「ノーの意思を示しましょう」。日本共産党は法定ビラ1号で争点の前面に押し出し、山川さんも第一声から同制度中止・廃止を掲げる党への支持を訴えました。

関連条例に民主も賛成

 市選管発行の選挙公報で後期高齢者医療制度について一言もふれていなかった民主の八木昭次候補の陣営は急きょ、事務所前に「お年よりをいじめるな!」の旗を立てて廃止署名集めに乗り出しました。自民党の中野英幸候補の陣営は、「新たな保険制度に移行したので、ほとんどの人は(保険料が)安くなったはずだ」(応援の公明県議)と弁明に追われました。

 しかし、ふじみ野市議会では〇七年十二月議会で日本共産党が後期高齢者医療制度の中止を求める意見書を提出したのに対し、民主は自民、公明といっしょに反対。県議会では同制度の関連条例に民主も自公といっしょに賛成しています。

 民主党の事務所で署名をしようとした市民が「県議会で賛成したんですかと聞いたら、『はいその通り』というんです。民主党を応援しようと思ったがとんでもない」と、共産党の事務所で署名していきました。

 「クリーンな政治」を訴えた民主候補ですが、昨年十二月のふじみ野市議会に、日本共産党が元自民党県議の一刻も早い辞職を求める決議を提案したのに対し、自民、公明とともに民主が反対討論に立ち、決議を否決しました。

 選挙結果を聞いて事務所に駆けつけた女性(64)は、「自民、民主の候補に勝ててうれしい。自民党は選挙買収がもとで再選挙になった責任について一言も謝らず無責任です。山川さん当選は市民の良識が通じた結果です」と話します。

県議2人で発言力増す

 三候補者の経歴も対照的でした。自民の中野英幸氏は地元埼玉7区(川越市など)選出の自民党衆院議員の長男で川越市で菓子会社を経営。民主の八木昭次氏も埼玉7区を地盤とする民主党衆院議員の秘書で、いずれも川越市在住で、上福岡との関係は薄い人物でした。県政の具体的問題にほとんどふれない自民、民主陣営の論戦について、各紙は「総選挙の代理戦争」と報道しました。

 一方の山川氏は合併前の福岡町・上福岡市時代から連続九期議員をつとめてきました。保守系の元市議が選挙後、「信頼できるのは地元の市議として長い間、地道に地域の人のためにがんばってきた、山川さん」と語るなど党派を超えた信頼が寄せられました。

 開票翌日の二十八日朝の東武東上線上福岡駅前。塩川鉄也衆院議員とともに公約実現への決意をのべる山川さんに、当選を喜ぶ人が次々と握手を求めてきました。

 駆け寄ってきた男性(88)は「共産党の県議が二人になって、発言力が増えたことがうれしい。後期高齢者医療制度などでじわじわと暮らしが苦しくなっています。不正や住民を苦しめる政治を徹底して追及してほしい」と語りました。

 (埼玉県・川嶋猛、同・林秀洋、佐藤つよし)


新潟・上越市議選

全52集落で懇談会開く

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(写真)後期高齢者医療制度廃止、公約実現の決意を述べる(左から)橋爪、樋口、上野、平良木の新議員と、引退する杉本敏宏市議=28日、上越市

 二十七日投開票の新潟県上越市議選で、日本共産党は一人区の吉川区、二人区の頸城(くびき)区、旧上越市(定数三十)で立候補した四氏が全員高位で当選しました。

保守からも支援集める

 「勝利の要因はなんといっても後期高齢者医療制度の廃止を訴えた日本共産党候補に願いが託されたのだと思います。選挙中、訴えに手を合わせてよろしく頼みますというお年寄りがいました。人の道に外れたひどい制度に怒りが示されたのです」。こう語るのは、吉川区の日本共産党後援会員の女性(43)です。

 同後援会長(57)は「九十二歳のおじいちゃんが、百歳まで長生きしようと頑張ってきたのにこれでは希望がなくなると言っていた。橋爪法一さんが制度の廃止を訴えたのに対し、相手候補はビラで制度だから仕方がないとか、多少がまんしてもらわなければならないと言っていた。橋爪さんは、父親が入院していることから、自分の問題としても訴え、それがより住民の心をとらえたと思う」と話します。

 現職の橋爪氏は、三年前の合併増員選挙でやったように、全五十二集落での集落懇談会を開催し、市政リポートも毎週発行。「共産党ではだめ」という相手候補の中傷に対しても、共産党議席の値打ちを語り、全住民を代表した貴重な議席であることを訴え、告示後も街角演説会で徹底して語りました。保守や他党派の議員からも支援をもらうなど、多くの支持を集めました。

 アンケートの返信用封筒に、後期高齢者医療制度廃止や国保税引き下げの署名が五百人から寄せられました。旧上越市でも、市営住宅に住む三十代の母親から中学校卒業までの医療費無料化の政策に共感が寄せられました。

町内会長が司会務める

 頸城区でも、上野公悦氏は五十六集落中四十四カ所で集落懇談会を開催。三年前の合併以後、体育館使用料の有料化など住民サービスが切り下げられ、住民の不満や怒りが語られました。「頸城の願いをしっかり発言し、その結果を報告する」という訴えが住民の心をとらえ、市長いいなりで議会で何も発言しない現職への怒りと相まって、町内会長が懇談会の司会を務めたり、後援会ニュースの配布などの協力者も増えました。

 二十八日、当選した四氏はそろって街頭宣伝。「教員時代の経験を生かし、子どもがすこやかに育つ教育条件整備で頑張りたい」(平良木哲也氏)、「後期高齢者医療制度の廃止を涙ながらに訴えたお年寄りのことが忘れられない。四人の力を発揮して弱いものいじめの政治を変えたい」(樋口良子氏)、「この間の住民の願いをたくさん聞き、胸に詰まっている。市政にしっかり反映させたい」(上野氏)、「牛飼いの経験生かし、上越市の重要産業・農業を発展させていきたい」(橋爪氏)と決意を述べました。

 (新潟県・村上雲雄)


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