2008年4月4日(金)「しんぶん赤旗」

主張

保育制度「見直し」

どこまで責任を放棄するのか


 東京都の認証保育所「じゃんぐる」保育園が認証取り消しとなりました。園長がいない、保育士の二重登録などの不正行為のためでした。

 重大なのは今、こうした認証保育所のような流れを国の保育制度全体に広げる議論が急テンポですすんでいることです。

財界が求める「認証保育」

 もともと認証保育所制度は、保育の「規制緩和」の中で、東京都が独自に職員数や面積で国基準に満たない施設にお墨つきを与え、発足させたものです。企業参入が進む一方、「保育料が高い」「園庭がなく保育スペースも狭い」「職員がすぐ替わる」などの問題が噴出していました。日本共産党都議団の調査では、食材費が園児一人一日三十六円という園さえあり、都の検査でも企業運営の約半分で何らかの問題が指摘されています。

 昨年十二月の政府の規制改革会議第二次答申は、認証保育所は「成果をあげている」と評価し、「基準の緩和」も問題ないと提言しました。そして保育所への直接申込制導入や保育料自由化、保育所への公的補助撤廃、保育士比率や面積の基準引き下げを要求しています。

 これらは先ごろ閣議決定された「規制改革三カ年計画(改定)」にも盛り込まれました。「多様なニーズに応える」を口実に、国と自治体が責任をもつ制度をなくし、認証保育所の水準でよしとするものです。

 財界や経済財政諮問会議の民間委員も、同様の提言を繰り返しています。この背景には、少子化による労働力不足への危機感があります。子育て中の女性労働力をいかに活用するか、そのために大量の保育所が必要だが、保育予算を低く抑えるにはどうするか、これが出発点です。

 こうした流れをうけ、厚労省(社会保障審議会少子化対策特別部会)でも保育制度「見直し」の検討を始めたことは重大です。子育て支援をかかげながら「公」の責任を投げ捨て、安上がりに、保育制度そのものを根底から切り崩すねらいを、絶対に見過ごすことはできません。

 保育所は、子どもの生活と成長の場です。ふさわしい施設と質、安定した運営が不可欠です。だからこそ現行制度は、設備や保育士配置に国基準を設け、それを満たした認可保育所を中心に、国と自治体の公費と収入に応じた保育料で運営しているのです。子育てをめぐる困難が深まるなか、認可保育所は専門的立場から親と子を支え、地域の子育て支援の役割も果たしています。

 同時に、国の社会保障費抑制と自治体財政難の下、公立の民営化、施設老朽化や耐震化の遅れ、半数が非常勤職員など、保育条件の悪化も進行しており、現場の必死の努力で公的保育を支えているのが現状です。

公的保育の拡充こそ

 今、全国に、保育所入所を待っている乳幼児が二万人近くいます。必要なのは、認可保育所の新増設を中心にした保育所整備計画の策定であり、国による十分な保育予算の確保です。諸外国に比べ低すぎる職員配置や面積の最低基準の充実など保育水準の向上も必要です。

 ドイツでは二〇一三年までに保育所定員の三倍化へ、国と自治体で総額百二十億ユーロ(約一兆九千億円)を投入する計画です。子どもの最善の利益(「子どもの権利条約」)の立場で、子どもと国民のくらしに軸足をおいた政策へ転換が必要です。親の要求と保育現場の実態に根ざし、公的保育拡充を求める声と運動を大きくひろげる時です。


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