2008年3月29日(土)「しんぶん赤旗」

学童保育

量も質も充実を

国民生活センターが提言


 「学童保育に対する公的支援体制は、かなり遅れた状態」「公的サービスとして学童保育全体の量・質の底上げが必要」―。国民生活センターは、「学童保育の実態と課題に関する研究会」(座長・新保幸男神奈川県立保健福祉大学教授)を設置し、調査・検討を重ね、行政と施設にむけた提言を発表しました。


 「研究会」は、研究者や弁護士、全国学童保育連絡協議会役員、国民生活センター研究員で構成。市区町村調査や大都市の施設調査、契約時の公付書面調査を実施するとともに、各委員の調査・研究を検討しました。

深刻な大規模化40人超が7割も

グラフ

 「提言」は、学童保育を子どもの生活の場として整備するためには、「学童保育の量・質の拡充、指導員の待遇改善が肝要」と指摘しました。

 量的問題の現状はどうでしょう。全国の小学校区の約3割には学童保育がなく、あっても利用者の増加に追いつかず、約1万5000人の待機児童が出ています。大規模化も深刻で、「望ましい規模」とされる40人を超える学童保育が7割あり、分割が必要とされる71人以上も大都市部では2割を超えています(グラフ1)。

 末っ子が小学校低学年の母親の6割は働いており、学童入所数はその3割にとどまっています。政府の「重点戦略検討会議」の「まとめ」は、「保育所から切れ目のない利用」のために、今後10年間に3倍化が必要、としています。

生活の場として環境整備大切に

 質的拡充の問題で「提言」は、「子どもが健やかに育つ施設、生活の場としての環境整備が大切であり、学童保育の設置・運営基準をつくり、それにもとづき整備、質の向上を図っていくことが求められる」としています。

 同センター調査では、利用者との間で「入所条件」「保育料金」などさまざまな問題があることが紹介されています(グラフ2)。

グラフ

 実態をみると、「土曜日に開所していない」自治体が3割近く(町村は38%、政令市7%、東京区部で16%)。開設時間は6時以前で終了する自治体が72%です。全国学童保育連絡協議会の調査では、6時ちょうどで閉まる施設が5割、6時30分以降に閉まる施設が3分の1となっています。同協議会は、父母の就労実態を考慮すれば「土曜日開設と午後7時ごろまでは制度として整備することが必要」と指摘しています。

 施設の「生活の場」の広さは、一人あたり1畳(1・65平方メートル)未満が60%あるなど、施設・設備整備も不十分です。

 指導員の給与は公立公営の常勤職員で月30万円、公立民営で17万円、民立民営で18万円。非常勤は大半が10万円未満です。「提言」は、「保育の質を左右する指導員が、意欲的な活動を継続して展開できるよう、指導員の待遇を整えなければならない」と指摘しています。

公的部分が推進力になる必要が

 「提言」は、学童保育への「公的支援体制はかなり遅れた状態」にあることを指摘。「少なくとも当面は、公的部分が推進力となって、長期・短期の目標を定めて、利用しやすい仕組みを導入するとともに、学童保育サービスの充実を目指していく必要がある」としています。

 「提言」はまた、「(施策充実に必要な)財政的な負担について社会的合意を得るための努力を継続的に行う」ことや、「安全面の対応への見なおし」「自治体間格差、施設間格差の是正」「苦情解決の仕組み整備とその周知徹底」も提案しています。

(2008年3月28日「しんぶん赤旗」)


情報提供や安全対策の強化も

 国民生活センター「学童保育の実態と課題に関する研究会」が発表した「提言」は、契約前の情報提供や安全確保についても指摘しています。

手続き上の明確さも必要

 「年度が始まったばかりなのに“中途入会はできない”と断られた」「申し込んだがなかなか入所させてくれない。優先順序があるようだ」などの苦情が各地の消費生活センターに寄せられています。

 「提言」は、「施設だけでなく、国や自治体が、利用者が施設を選択する際に適切な判断が可能になる情報を十分提供すべき」「入所手続きや入所基準についても事前に利用者に情報を提供し、手続きの不明確さを極力排すべき」だとのべています。

法律ふまえた契約に

 大都市部の施設への調査によると、一部に「納付済み料金は理由を問わず一切返金しない」「保育活動中の事故、災害、事件などの被害には事業者の責任をいっさい問わない」という法的に問題のある誓約書・承諾書を交わしている例がありました。

 「提言」は、「利用者に一方的に不利益な内容の誓約書など」は撤廃し、消費者契約法をはじめとする各種法令をふまえて契約条項を作成すべきだとしています。

 こうした「誓約書」が作られる背景には、特に民営の学童保育での運営の困難さや不安定さがあります。「提言」は、公的部門が推進力となって学童保育を量的・質的に充実することを求めています。

けがや事故対策強め

 けがや事故は多くの学童保育で起きます。「提言」は、「施設は、けがや事故時の対応基準(マニュアル)を作成する。事故を記録し、分析と対応策を検討する」「自治体は、事故情報を収集し、各施設や利用者に情報提供する」ことを求めています。

 安全対策の強化のためには「施設整備、職員研修、安全教育、衛生管理、防災・防犯対策、関係者の連携などが必要」だとのべて、「そのための条件整備は行政が果たさなければならない重要な役割」と指摘しています。

 けがや事故発生にそなえ、すべての学童保育が損害賠償責任保険に加入することを自治体の任務として指導することも提案しています。「提言」は、安全面の対応に個別の施設だけでは限界があることから、「公的サービスとしての安全面の対応への見なおしが必要」としています。

グラフ

写真

(写真)「研究会」の報告書『学童保育の実態と課題に関する調査研究―放課後の子どもの生活の場が安心して利用できるために』。各委員の論文や調査結果、提言を収録しています。A4判282ページ、定価1000円。電話03(3443)6217(国民生活センター相談調査部)

(2008年3月29日「しんぶん赤旗」)


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