2008年3月24日(月)「しんぶん赤旗」

戦場で私は怪物だった

帰還兵、占領者として証言

政府発表に挑戦 真実語る


 開戦から五年。イラクから帰ってきた兵士たちが反戦に立ち上がっています。ワシントン近郊で行われた証言集会「ウィンター・ソルジャー」(十三―十六日)では、帰還兵たちが占領者としての振る舞いを自ら証言し、米軍によるイラクでの戦争犯罪と残虐性を告発しました。(ワシントン=鎌塚由美)


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(写真)証言の最後に「平和を」と訴えピースサインをつくる帰還兵=16日、メリーランド州シルバースプリング(鎌塚由美撮影)

 「ウィンター・ソルジャー」とは、ベトナム戦争中の一九七一年に、帰還兵がベトナムでの戦争犯罪と残虐性を告発した同名の「公聴会」にちなんだもの。米国のベトナム反戦世論を呼び覚ました先人たちの伝統に、イラク帰還兵たちが続きました。

 主催したのは〇四年に七人から出発した「反戦イラク帰還兵の会」(IVAW)です。現在、全米各地に四十二の支部を持ち、八百人を超えるメンバーを抱えています。イラクに駐留する現役兵士もいます。

市民殺害の日常

 証言では、「交戦規則」や、イラク市民に対する「非人間的」な扱いから「違法な占領」の実態が語られました。「交戦規則」に関しては、戦争が長期化するなかで「徐々に解除され、目にしたものすべてに発砲してもいいと許可された」との証言が相次ぎました。

 市民を殺害したことを「司令部」に報告したが、返答は「チャーリー・マイク(任務を遂行しろという隠語)」のみ。罪のない市民を殺害しても責任さえ問われない、市民殺害の日常化が浮き彫りになりました。

 「イラクの人々を助けようと思って戦場に行ったが、イラクでは無残に市民を殺した。殺さないと自分たちが殺されるからだ」と述べ、戦争はきれいごとではなく「残虐行為だ」と語った元陸軍兵士。「戦利品」のように殺害した市民の写真を撮っていた元海兵隊員は、「戦場では自分は怪物だった。イラクの人々を苦しめた憎しみと破壊を謝罪したい」と語り、軍から与えられた功労メダルを上着からもぎ取り投げ捨てました。

メディアが無視

 この衝撃的な証言は、IVAWのホームページから同時中継され、一部のラジオやケーブルテレビでも流されましたが、開戦前から戦争応援団となってきた米主要メディアは、ほぼ完全に無視しました。

 地元ワシントン・ポスト紙は報じましたが、地方版のみの掲載。「ウィンター・ソルジャー」会場前に抗議にきた好戦派の人々の声も併載したものでした。

 カミロ・メヒアIVAW議長は、「兵士たちの声はいまだに、政府からも企業メディアからも沈黙させられたままだ」と指摘。米軍を撤退させ戦争を終わらせるまで「われわれは真実を語り、政府発表に挑戦し続ける」と強調しました。

 ▽イラクからの米軍の即時撤退▽イラク国民への補償▽帰還兵を使い捨てにせず手厚く保護せよ―の三つの要求を掲げるIVAWは、「兵士は不法な戦争を拒否する権利がある」と現役兵士たちが声をあげることを励まし続けています。

 「イラクやアフガニスタンに駐留している兄弟姉妹に訴えたい。この違法な戦争に反対しているのはあなただけではない」―現役陸軍兵士のフィル・エリフさんが最終日に訴えました。「この占領を終わらせるためにともにたたかおう。われわれにこそ、兵士たちを帰還させる力がある。戦争を拒否しよう」

 IVAWのドーティー事務局長は最終日に「われわれのホームページには、処理できないほどの入会申し込みが殺到している」と報告。詰め掛けた約三百人のメンバーと支援者から大きな拍手がおきました。



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