2008年3月22日(土)「しんぶん赤旗」

チベット問題

中国外相、騒乱事件を説明

新華社 「四川省で発砲」認める

NGO発表 アバで23人死亡確認


 チベット騒乱問題について、中国政府は「暴力事件」に対する治安維持活動の側面を強調する一方、非政府組織(NGO)などは、中国政府への抗議行動に対する抑圧だとの批判を発表しています。


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 中国の楊潔箎(ようけつち)外相は二十日、米国のライス国務長官と電話で会談し、この問題を説明しました。中国国営新華社電によると、楊外相はチベット自治区ラサで起きた暴動について、「ごく少数の者による殴打、破壊、略奪、放火の重大な暴力犯罪事件」だと指摘。「分裂をたくらむダライ・ラマ集団が組織、計画し、入念に画策、扇動し、国内外の『チベット独立』分裂勢力が結託して起こしたもの」だとのべました。また、「(国際社会は)中国が法に従ってとった措置を理解し、支持すると信じる」と主張しました。

 ラサで起きた暴動は、周辺地域にも波及し、甘粛省の甘南チベット族自治州と四川省アバ・チベット族チャン族自治州アバ県で「チベット独立」を叫ぶ暴動が起きています。

 このうち、十六日におきたアバ県での暴動について、新華社電は「警官が自衛発砲」との見出しで報道し、中国当局の発砲で四人の負傷者が出たことを初めて認めました。ただ、いったん「警官が暴徒四人を射殺」と速報した後、二十五分後に「四人負傷」と訂正しています。

 一方、インドに拠点を置くNGO「チベット人権民主化センター」は二十一日までに、アバ県での暴動について、少なくとも十六歳の女子学生を含む二十三人が武装警察の発砲で死亡したことが確認されたと発表しています。

 同センターは、十四日のラサでの騒乱以降、少なくとも七十人のチベット人が殺害されたことが分かっていると指摘。中国側の対応について、「チベット人の平和的なデモ参加者に対し、武力を残虐に行使している」として、「形を変えた戒厳令」だと批判しています。

 四川省発の二十一日付ロイター電によると、アバ県のチベット人住民が電話で語った話として、十六日に行政庁舎や職員を襲った抗議行動の参加者に対し、警官が発砲し、「人が死んだのは確かだ」「十人かそれ以上が死んだ」との証言を紹介。また、「私は暴力行動の支持者ではないし、相手が漢民族だからという理由だけで襲撃することには反対だ」との言葉も伝えています。

米国務長官、「自制求めた」

 【ワシントン=鎌塚由美】ライス国務長官は十九日夜、中国の楊潔箎外相に電話し、チベット自治区などで発生している抗議行動での対応で自制を求め、チベット仏教指導者のダライ・ラマ十四世との対話を促しました。

 ライス長官は二十日、記者団に対し「チベット情勢を懸念している」と述べ、楊外相との電話会談では「自制を求めた」と語りました。暴力については、「すべての関係者が暴力を自制することがとても重要だ」と強調しました。

 ライス長官は「われわれは中国がダライ・ラマとの対話に取り組むことを促してきた」とし、ダライ・ラマは「暴力に反対し、チベットの人々の文化的自治を支持するが独立は支持しない、と明確に表明している権威ある人物」だと語りました。


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