2008年3月11日(火)「しんぶん赤旗」

新銀行東京

旧経営陣の責任強調

経営破たん調査報告 都知事責任は不問


 経営破たん状態の新銀行東京(東京都千代田区、津島隆一代表執行役=前東京都局長)は十日、経営不振の原因を分析した調査報告書の概要を公表しました。過剰融資をあおった旧経営陣の仁司泰正元代表執行役(昨年六月辞任、トヨタ自動車出身)の責任が「極めて重い」とし、「損害への相応の責任を求めることが必要」と結論づけました。

 調査委員長の津島代表、委員の岡田至執行役(東京都理事)らが同日夕、都庁で記者会見し、報告書の概要を説明。過剰融資の実態について、デフォルト(債務不履行)は今年一月末時点で二千三百四十五社、二百八十五億円にのぼり、融資後三カ月以内に経営破たんした件数が五十数件あり、詐欺と疑われるものが三十五件あるとしています。

 しかし、銀行事業に手をだし、新銀行の制度設計、基本計画をつくった石原慎太郎知事をはじめ、大塚俊郎取締役会議長(元都副知事)、津島氏ら都幹部には全く問題がなかったと責任逃れに終始。報告書本文の公表も拒否しました。

 報告書概要は、経営悪化の原因を、仁司元代表らが融資の判断をスコアリングモデル(企業の財務データで融資の可否を機械的に決める審査方法)に頼ることを強く奨励し、経験に基づく審査を排除したことにあると指摘。融資実績に応じて最高年二百万円の成果手当を営業担当者に支給し、デフォルトになっても不問にしたことでモラルハザードが広がったとしています。

 報告書概要は、「〇五年度末時点で、抜本的な対策が実行されていたならば、現在の危機的な経営状況は一変していたと思われ」ると、旧経営陣だけに責任を押し付けています。

 十一日の都議会予算特別委員会で代表総括質疑に立つ日本共産党の吉田信夫幹事長は、「今日の事態を招いた元凶である石原知事にこそ最大の責任があり、その責任を徹底的に追及していく」と語っています。


 新銀行東京 石原慎太郎知事が二〇〇三年知事選の公約にかかげ、都が一千億円を出資して〇五年四月に開業。今年三月期決算で累積損失が千十六億円にふくらむ見通しです。新銀行への出資予算に日本共産党は反対、自民、民主、公明の「オール与党」が賛成し可決。石原知事は今都議会に、四百億円の追加出資を提案。日本共産党は知事の責任を追及し、撤回を求めています。


解説

400億円追加出資に誰が納得するのか

 新銀行東京が十日発表した調査報告書(概要)は、「経営悪化を招いた原因究明」をしたとしながら、仁司泰正元代表執行役ら旧経営陣だけに責任を押しつけました。都が一千億円を出資し、無謀な銀行事業に乗り出した石原慎太郎知事の責任、都が作成した基本計画、制度設計の欠陥など根本問題は検証していません。

 しかも、調査対象期間は二〇〇五年四月の開業から〇七年六月までとし、累積損失が千十六億円(今年三月期決算見通し)にのぼる深刻な経営実態や、新たに都に要請した四百億円の追加出資についての説明もありません。

 報告書でも認めているように、焦げ付いた融資は「スコアリングモデル」という、企業の財務データをもとに自動的に審査をするスピード貸し付けを売り物にしていました。

 この手法を取り入れたのは、石原知事と現経営陣の大塚俊郎取締役会議長(元都副知事)や津島代表執行役(元都新銀行設立本部長)です。スコアリングモデルの審査手法は、〇四年二月に東京都が発表した「新銀行マスタープラン」で強調していたものです。過剰融資を目標にかかげ、過剰融資の仕組みを推進した経過を不問に付すことはできません。

 報告書本文は石原知事には提出したのに、津島代表は記者会見で公表を拒否しました。石原知事の思いつきで開業した新銀行ですが、経営の危機的な実態と原因について、全面的に明らかにし、都民の判断を求めるという立場はかけらもありません。記者団から「しんしな姿勢が感じられない」と厳しい質問が相次ぎました。

 都民の税金から出資した一千億円が赤字に消える事態に、さらに四百億円も追加出資するのは、税金をドブに捨てる行為です。

 追加出資案は撤回し、現経営陣を外した公平・公正な第三者委員会で再調査し、詳細な経営情報を都民に公開して破たん処理に踏み出すことを急ぐべきです。(岡部裕三)


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