2008年3月9日(日)「しんぶん赤旗」

「九条の会」が全国講演会

護憲 情熱

“小田実さんの志 受け継ぐ”


 昨年七月に亡くなった「九条の会」呼びかけ人で作家の小田実氏の志を受け継ごうと、「九条の会全国講演会」が八日、東京都渋谷区で開かれ、北海道から沖縄まで全国各地から会場いっぱいに二千三百人が参加しました。呼びかけ人七氏が講演したほか、哲学者の梅原猛さんがメッセージを寄せました。小田夫人の玄順恵(ヒョン・スンヘ)さんも「九条の会の人々の熱い友情に支えられた」とあいさつしました。


 講演のなかで、評論家の加藤周一氏は「小田さんは戦争がなし崩しに始まり、拡大していくものだということを見抜いた」と指摘。なし崩しの戦争に対して黙っていたら手遅れになる地点があるとして、「小田さんが生きていたらいつ転換点なのか指摘しただろう。小田さんの遺志を受け継ぐということは解釈改憲の継続を許さないことだ」とのべました。

 作家の大江健三郎氏は、『HIROSHIMA』を題材に小説家としての小田氏を論じ、哲学者の鶴見俊輔氏は「世界の思想史の中に置いてみたい」として、小田氏の思想を批判的常識哲学だと評しました。

 九十歳ながらかくしゃくとした姿をみせた三木睦子氏(三木武夫記念館館長)は「憲法九条というのはまったくよくできた憲法」と強調。「九条が本当に戦後の日本にふさわしい」とのべ、「謙虚で平和で楽しい日本にしてほしい」と期待を語りました。

 「良心的軍事拒否国家」という小田氏の考えを紹介した劇作家の井上ひさし氏は、第二次大戦中に中立国が人道的な役割を果たした例も示し、「日本にはすばらしい憲法がありこれを国際関係に生かすこと」を提起。憲法研究者の奥平康弘氏は、小田氏も原告となっていた自衛隊のイラク派遣違憲訴訟について触れ、憲法が人々の生活や運動の灯台的な役割を果たしているとしました。

 作家の澤地久枝氏は、「日本に市民という言葉を定着させたのは小田さん」と市民運動家としての足跡を評価。「憲法の原点に戻りたい」という一点で集まった「九条の会」が、自公民の改憲議連「新憲法制定議員同盟」に名指しで“対抗”されるまでになったことをあげ「私たちと向き合う対等な関係になりたければ、議員をおやめになったほうがいい」と会場の笑いを誘いました。

 講演を聴いた千葉県船橋市の男性(66)は「自分たちの頭で考えやれることをやって、『九条の会』をもっと大きくしていきたい」と語っていました。

 講演会の休憩時間中に呼びかけ人会議が開かれ、「小田さんはいなくなったけれど、私たちとともにいる」(三木氏)として、今後も九氏の氏名、写真を配した「九条の会」のポスター、リーフなどは変えないこと、憲法セミナーを今年六月と秋に開催することなどを確認しました。


梅原猛さんがメッセージ

 「九条の会」呼びかけ人の一人である哲学者の梅原猛さんは、八日に渋谷区で開かれた「九条の会」講演会にメッセージをよせました。

 梅原さんはメッセージで、「私は戦後一貫して平和憲法を守れという態度をとっています。それは平和憲法、特に九条には人類の未来の理想が含まれているからです」と思いを語り、「憲法改正論者の多くは、日本をもう一度十九世紀の国家主義思想に戻そうとするものです。そうである限り、私は一生憲法改正の動きに反対を続けていこうと思っています」と訴えました。



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