2008年3月7日(金)「しんぶん赤旗」

巧妙 新手の詐欺

“自宅の競売 阻止します”

巻き上げ許さぬ 被害者訴え


 「裁判所からの競売開始決定を見ただけであきらめていませんか」と不動産の競売開始決定の通知を受けた人に支援を申し出、それに応じると、巧妙な手法で土地、建物をだまし取る被害が出ています。被害者は、「あんなつらい体験は二度とごめん」と被害の根絶を訴えています。


 「はがき一枚で地獄に落とされた」というのは、横浜市に住む安田実さん(58)=仮名=。若いころから運送業に従事し、自動車部品を中心に、全国各地に運ぶ仕事を続けてきました。しかし、バブル崩壊後は、苦しい経営が続きました。

 二〇〇〇年に入って、事業を続けるための借金をしながら、家を建て直しました。〇三年七月、借金を返せなくなって担保にしていた自宅が競売申し立てをされました。その対応に追われていた同年十二月、NPO法人(その後自主解散)「競売体験者再起研究会だるま会」からのはがきをうけとったのです。「なんとか家を残したい」と誘いにのりました。

名義変更迫る

 〇四年一月以降、数回「だるま会」の狩野光司代表らと会い、相談しました。同年三月、「自宅の競売を阻止するには、父親の家を担保に金を借りる必要がある。短期間、名義を変更しなさい」といわれ、父親名義の家を狩野代表のグループ会社代表の名義に変更しました。しかし、変更後も、同グループ会社からは、金銭の融通ができないとの連絡。同年九月、自宅は競売にかけられてしまいました。

 だまされたことに気づいた安田さんは、NPO法人「支援センターたすけ愛クラスター」の支援も受けて〇五年、父親の自宅を元の父親名義に戻すことを求める裁判をおこし、〇六年七月安田さんの主張を認める判決が出されました。

 タクシー運転手の収入で、立ち直りつつある安田さんはいいます。「この数年、ほんとに苦しい日々でした。被害者のなかには立ち直れない人も多いと思う。困っている人間をだまして家も土地もまきあげる反社会的行為は許されない」と被害の根絶を訴えます。

公の施設悪用

 安田さんを支援してきた、困りごと相談所を自認する「たすけ愛クラスター」の宮崎弘さん(69)は「彼らは裁判所が公表する競売開始決定通知をつかって、決定を受けた人にはがきを出している。被害は相当数にのぼると思う」といい、実際に数件の相談がきているといいます。

 狩野氏らの行為は、弁護士資格のないものの法律行為を禁じている弁護士法違反の疑いもあります。

 この「だるま会」を神奈川県の県民活動サポートセンターが、ボランティア団体の一つとしてインターネット上で紹介し、施設の使用まで認めていました。このため〇五年四月に宮崎さんらは、同センターに便宜供与をやめるよう抗議しました。ことし一月、再度の抗議に「だるま会」から「利用団体解除届」が同センターに出されるまで放置されてきました。

 宮崎さんとともに、この問題をとりあげてきたたすけ愛クラスターの瀬渡秀和さん(75)は「公の施設使用をだるま会は最大限悪用して、みんなを信用させた。県の責任は重大だ。泣き寝入りしている人は多い。被害根絶のためにがんばりたい」と話しています。


 競売 多数の人に価格を競り合わせ、最高価格を申し出た人に売ること。競り売り。狭義では、融資などの担保にした不動産を売却して債務を返済する際の売却手続きをいいます。競売にあたって裁判所は競売開始を決定し、不動産の差し押さえを宣言。次いで不動産の最低価格を決め、競りにかけ、最高値で売却します。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp