2008年3月2日(日)「しんぶん赤旗」

イラク・アフガン戦費

米「300兆円超す」

帰還兵補償、重く

ノーベル賞受賞の 経済学者が算出


 【ワシントン=鎌塚由美】ブッシュ政権がすすめるイラク、アフガニスタンでの「対テロ」戦争の経費は、最大「三兆ドル(約三百兆円)以上」になるとの試算が明らかになりました。米国の著名な経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏が新著のなかで示しました。


 ノーベル経済学賞受賞者としても知られるスティグリッツ氏はイラク開戦から五周年(三月二十日)を前に、ハーバード大学のリンダ・ビルメス教授とともに『三兆ドル戦争―イラク紛争の真の対価』と題する著書をまとめました。

 この中でスティグリッツ氏は「米国のイラク侵略は今や恐ろしい間違いだったことは明白である」とし、戦争の対価は「最終的にイラクを去った後に増え続ける」と指摘。これらの「対価は意図的に国民に知らされていない」と述べました。そして、対テロ戦争において「米国の石油、軍需産業以外には真の勝者をみつけることは難しい」と語っています。

 イラク戦費については、議会予算局(CBO)が昨年十月、最大二兆四千億ドル(約二百五十兆円)と試算していました。「三兆ドル以上」という経費についてスティグリッツ氏らは、これらは「控えめな試算」だと述べ、自らの試算を「現実的で穏当な」ものと呼びました。

 この「穏当な」試算には、対テロ戦費の追加予算が組まれているだけでなく、国防総省の本予算のなかに「隠されている」戦費や、労働省予算にある軍事請負業者たちの保険費用などもはじきだしています。もっとも見過ごされているのは帰還兵への補償だとして詳しく試算しています。

 これまで派兵された、のべ百六十万人のうちの相当数の人が障害者となっているなか、これら帰還兵への「障害手当」や社会保障費などは今後数十年にわたり米国民の肩にのしかかってくると指摘。さらに戦死兵士や負傷兵の家族やその地域が負う「社会経費」についても光を当てました。

 すでに「対テロ」戦争では、六千四百六十億ドル(約六十六兆円)が支出されています。スティグリッツ氏らは、二〇一七年までの「作戦費」は、九千百三十億ドル(約九十三兆円)になると試算。帰還兵への障害手当や生活保障への七千百七十億ドル(約七十三兆円)や、軍備品の更新費用四千四十億ドル(約四十一兆円)と、利率や今後の借入金の利息を加えて、「三兆四千九百六十億ドル」と算出しました。



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