2008年2月29日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「改革ガイドライン」

効率だけでは公立病院守れぬ


 「お産ができない」「急患の受け入れ先がない」など、全国各地で地域医療の崩壊がすすんでいます。なかでも公立病院(都道府県、市町村、組合立病院など)は赤字が深刻で、存立さえ危ぶまれています。

 ところが総務省の「公立病院改革懇談会」が取りまとめた「公立病院改革ガイドライン」(昨年十二月)は、「医療崩壊」の根本的な対策を放棄し、病院の経営効率のみを強調しています。

 政府はこの「ガイドライン」を指針に、各自治体に対して「公立病院改革プラン」の二〇〇八年度中の策定を通知していますが、効率だけでは公立病院は守れません。

再編・縮小、廃止を推進

 「公立病院改革ガイドライン」は、(1)経営の効率化(2)病院機能の再編・ネットワーク化(3)経営形態の見直し―の「三つの視点」を提示し、一体的な推進を求めています。医師・看護師不足の解消など、国民の命と健康を守るという地域医療体制の充実・確保の視点はまったくありません。

 「ガイドライン」の策定は、安倍内閣が二〇〇七年六月に閣議決定した「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(骨太方針二〇〇七)で、「社会保障改革」の一環として明記されました。

 「骨太方針」では、五年間で国・地方で一兆六千億円削減すること、そのために国の社会保障費を毎年二千二百億円減らすことを打ち出しました。「自治体リストラ」で行政の担い手を「官から民」に移した財政支出の削減も掲げました。

 こうした路線にもとづいた「社会保障改革」の主要な一つが、この「ガイドライン」であり、効率性の追求を最優先した公立病院の再編・縮小と廃止の推進です。とくに経営効率の面では、三年間で経常収支の黒字化が必要だとし、病院単位での数値目標の設定を求めています。

 そのために独立採算を原則に自治体の一般会計からの赤字補填(ほてん)を制限したうえ、目標達成のためには民間委託や職員給与の見直し、病床削減、診療所化などを例示しています。とくに病床利用率が三年連続70%以下の病院は「抜本的な見直しを行うことが適当」とし、病院の廃止・縮小を迫っています。

 今日のような地域医療と公立病院の危機の根本には、社会保障制度の連続改悪による診療報酬の引き下げと患者の負担増による受診抑制、さらに地方交付税の大きな削減があります。公立病院の診療体制をさらに弱体化し、財政支援を削減するのでは、危機からの脱出は望めません。

 二十六日の衆院予算委員会では日本共産党の高橋千鶴子議員が、医師・看護師不足の解消による医療体制の充実、公立病院への交付税増額を要求しました。増田寛也総務相は、医師不足も病院経営に大きな問題になっているとのべるとともに、「僻地(へきち)にある公立病院などへの交付税措置は来年度、充実・強化させなければならない」と答えざるを得ませんでした。

医療費抑制策の転換を

 公立病院は僻地医療や救急・救命、感染症、精神医療など民間ではできない不採算部門を担い、地域医療の中核的な役割を果たしています。

 いま各地で「公立病院、地域医療を守れ」と住民、自治体首長、医療関係者が共同して運動しています。自治体決議も相次いでいます。

 政府はいまこそ医療費の総額抑制政策を根本から見直し、安心して暮らせる地域医療へ転換すべきです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp