2008年2月18日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

兵庫青年ユニオン 〜波〜

「労組ってナニ?」から始まった

ど素人たちの連帯


 「労働組合ってナニ?」。これまで無権利の状態に置かれていて、労働組合運動についてまったく知らなかった若者たちがユニオン(労働組合)を結成してたたかいはじめています。「貧困と格差」社会の変革を求める、兵庫県の若者の取り組みを紹介します。菅野尚夫


メチャ悔しい

 「メチャ悔しかった」。兵庫青年ユニオン「〜波〜」の書記長、赤木涼子さん(31)は、組合を作ろうとした胸の内をそう語りました。

 赤木さんが悔しい思いをした出来事は、親しかった友人が福祉系の4年制大学を卒業したものの、就職先がなく、「世界のトヨタ」系の期間工として働き、工場閉鎖のために解雇。仕事が見つからず自衛隊員になってしまったのです。

 赤木さんはいいます。「いくら努力しても就職できない。学費が高くて、卒業と同時に学生ローンの借金が200万円以上も残っている。10年かけて返済しなければならない。自衛隊員になった彼を責めることのできない悔しさ。格差社会をつくった政治は、私たちをメチャばかにしている」

 赤木さんは、神戸市で働く契約社員です。市議会の事務職で働き1年契約。給料は神戸市から出ていますが、手取り14万5000円。「年収約200万円の働いても働いても貧しいワーキングプアです」と苦笑します。

 昨年5月20日に東京・明治公園で開かれた全国青年大集会に参加し勇気付けられました。「ともに学び、力を合わせ、会社と交渉する、社会を動かす、そんな青年ユニオンを兵庫県にもつくろう」と、昨年9月に結成大会を開きました。

 「労働組合って何か、まったく知らないところからのスタートです。だれでも人間らしく働いて、おかしいことにはおかしいと気づいて立ち向かう力をつけたい」と赤木さん。ユニオンの名称に「波」とつけたのは、「多彩な光を放ち、どこまでも悠々と広がって波のように青年の中にうって出たい」という思いから。

 赤木さんは、日本共産党の志位和夫委員長が8日に行った国会質問に励まされたといいます。「人間をモノ扱いする派遣労働の悲惨さを代弁してくれた。ほんとに派遣法を改正して、私たちを保護する法律にしてほしい」

 14人から出発した兵庫青年ユニオンは、半年で約30人に成長しました。「9月の定期大会までには100人の仲間を迎え入れたい」と、赤木さんは夢を語ります。

要求のタマゴ

 赤木さんは14日の昼休みの時間、神山慶太さん(25)=仮名=と、兵庫県労働組合総連合(兵庫労連)を訪れて、森岡時男・労働相談センター所長のアドバイスを受けました。

 神山さんは、IT関係の派遣労働者です。携帯電話やデジタルカメラなどの最終検査作業の仕事をしています。安い給料と、「物流」のように全国に派遣させられる「旅がらすのような生活」を何とか改善させることはできないかと、相談にきたのです。

 神山さんの派遣先は、全国各地にあり、広島の仕事が終わると東京、次は名古屋と渡り歩きます。月給17万円ということで派遣会社の正社員になったものの、給与は時給計算で、仕事が少ないと13万円にしかならない月もありました。

 1年とか、長いと3年間も地方の都市でアパート暮らし。家賃の二重払いにならないように、神戸市のアパートを解約して派遣先の工場に行きます。神戸市に戻る時にはまたアパートの敷金、礼金、前家賃とまとまったお金が必要になり、自己負担です。「引っ越し代は後払い。なんとか改善させたい」

 神山さんの悩みをじっと聞いていた森岡所長はこんなふうにアドバイスをしました。「会社の働かされ方に“不満”を持ったことは、要求のタマゴができたということ。愚痴だけでは要求とはいえない。要求に正当性はあるか? 実現の手だてはあるか? みんなと勉強してはどうですか」

 「クビを切られないでしょうか」と神山さん。

 「組合員を解雇したら、兵庫青年ユニオンと兵庫労連を敵にすることになる。あなたのバックにはそれだけの力があるのです。根拠のない恐怖心は持たないほうがいいですよ」

 神山さんは「相談に来て良かったです」と感謝します。「どこにも相談できずにいました。『一人一人自立した労働者にならないと、自分の身も守れない』という助言に勇気づけられました」

食べて学んで

 神戸市のあるビルの会議室。兵庫青年ユニオンの定例執行委員会が開かれました。

 委員長の明石大輔さん(30)=仮名=は、夜7時から翌朝8時まで13時間働く若者。コンビニなどにおろす惣菜(そうざい)をつくる食品工場で働いて12年になります。半年間夜勤をして、次は朝7時から夜8時までの日勤に半年間つくというサイクル。長時間の勤務体制で、休憩は20分しかありません。

 夜勤のときで月22万円。日勤では19万円から20万円。ボーナスもなく、季節限定の食品をボーナス代わりにする前近代的なやりかたが続いています。「正月休みもなく、有給休暇を取ったことがない」過酷な労働です。

 「労働時間を短縮させたい」といって、仕事場に向かう明石さん。太陽と疎遠な感じさえする顔には、後に引けない健康と命をかけた組合運動への情熱がにじみます。

 兵庫青年ユニオンでは、労働相談をうけたケースなどは派遣会社と団体交渉するなどたたかう準備をしています。

 月1回「波の会」を開いて、組合員の交流も深めています。

 「組合員の約9割がアルバイトや派遣など非正規の労働者です。ばらばらに働いていますから、組合員同士が顔も知らない場合もあります。『波の会』は、まず食べておなかを満たし、しゃべって、学ぶ。『ど素人たちの連帯』で、ユニオン運動を発展させます」

 ユニオンを立ち上げた赤木涼子さんの決意です。


「青年ユニオン川柳」を発表

 兵庫青年ユニオンでは「サラリーマン川柳」に刺激されて「青年ユニオン川柳」を組合員に呼びかけ、発表しました。

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卒業記念旅行の誘い 高額なので迷います

  大学の友人から、卒業記念旅行に誘われました。「一生の思い出にしたい」という気もするんですが、高い費用が気になります。友人のなかには2回も3回も行く人がいます。なんか、流行にのせられているような気もして、迷っています。(22歳、女性、東京都)

思い出刻む方法は他にも

  目的が魅力的なだけに確かに迷いますね。4月から仕事に就けば、本当に忙しくて大変です。せっかく親交を深めることのできた大学時代の友人と「思い出」を刻みたいという気持ち、よくわかります。仕事に向けて新たに意欲もわくことでしょう。また、困難に陥った時、お互いに相談相手になれるかもしれません。

 卒業旅行に大きな意味があることは間違いありません。しかし、二つ気になります。一つは、「一生の思い出」というのはどうでしょうか。新しい職場で、労働を通していくらでも思い出はつくれます。また、そんな人生を刻みたいものですね。もう一つは、お金がかかりすぎるのでは、いくら目的に意味があっても、手段がその価値を相殺することもあります。むろん、その価値判断は人によって違うでしょうから、基準を設定したり、考えを押しつけたりすることはできません。

 ただこの2、3年来、就職戦線が好調になったのに目をつけて、旅行業者が「卒業旅行は3回行く!」などをうたい文句に、「ガクタビ」「ガクトク」などの商品売り込み攻勢をかけている現実がある点が気になります。つまり、商業主義に乗せられないかと心配です。

 自分を見失わず、学生時代のいい思い出を胸に刻む方法は、旅以外にも、考えれば無数にあるような気がします。ぜひ、あなたらしくすてきな思い出をつくってください。


教育評論家 尾木 直樹さん

 法政大学キャリアデザイン学部教授。中高二十二年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。


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