2008年2月16日(土)「しんぶん赤旗」

改悪教育基本法を前面に

道徳推進教師を配置

学習指導要領 文科省が改定案


 文部科学省は十五日、小中学校の学習指導要領と幼稚園教育要領の改定案を発表しました。改悪された教育基本法を冒頭に掲げ、国が決めた通りの「道徳教育」の推進を前面に出しました。算数・数学、理科を中心に、授業時間を増やし、基礎的な知識や技能を「活用する力」や「言語力」の育成を重視するとして、具体的な指導法まで細かく示しました。


指導方法まで制約

 学習指導要領はほぼ十年ごとに改定されており、今回は二〇〇六年に教育基本法が改悪されて以後、初めての改定になります。改定案は本文の前に初めて教育基本法の全文と学校教育法の「義務教育の目標」条項を掲載しています。

 改悪教基法で「伝統と文化を尊重し…我が国と郷土を愛する…態度を養う」ことが教育の目標とされたことを受けて、「道徳教育」をすべての教科や活動で行うことを明記。道徳の「教科化」は見送ったものの、各校に「道徳教育推進教師」を配置させるなど、国家統制を強めるものになっています。

 国語では小学生から古文・漢文の音読をさせ、社会では「我が国の伝統や文化の学習」を強化。中学の体育では「武道」が必修化されました。

 算数で台形の面積など、理科でイオンや遺伝の規則性などの学習事項が復活しました。これらは前回の改定時に削減され、関係学会などから「基礎的な学力がつかない」と批判が出ていたものです。

 合計の授業時間は小学校低学年では週二時間、それ以外は週一時間の増加。小学校に「外国語活動」が導入され、週一回程度、英語の時間が設けられることになります。

 中学校では部活動についての記述を加えました。

 文科省は三十日間の意見募集期間を置いた後、三月下旬に改定学習指導要領を告示。小中学校では二〇〇九年度から部分的に先行実施し、小学校は二〇一一年度、中学校は二〇一二年度から全面実施するとしています。

 日本共産党国会議員団の石井郁子文教科学部会長は「国民の学力への不安や願いにこたえたものになっていない」との談話を発表しました。


改定案のポイント

一、道徳推進教師配置し、「道徳教育」を全教科で実施

一、理数の総授業時間は小学校六年間で百九十七時間増(現行比16%増)、中学校三年間で百六十五時間増(同27%増)

一、総合的な学習の時間は削減。中学の選択教科を事実上廃止

一、改悪教育基本法を受け、「伝統と文化」に関する教育を強化

一、小学五年から英語、中学の体育で武道をそれぞれ必修化

一、意見発表や説明、批評、創作、リポート作成など言語による表現活動を全教科で重視

一、自然の中での宿泊活動、職場体験活動を推進


 学習指導要領 各学校で編成する教育課程の基準として文部科学省が教育内容や授業時間数などを示したもの。検定教科書の内容の基準にもなります。文科省は法的拘束力があるとして、これにもとづいた教育をおこなうよう学校・教師への締め付けを強めています。



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