2008年2月8日(金)「しんぶん赤旗」

岩国市長選

住民追い出し 米軍住宅を建設

艦載機移転 推進派の思惑

背後に1兆円規模の利権


 米空母艦載機移転など米軍再編問題を「最大の争点」(井原勝介前市長)にした山口県岩国市長選挙(十日投・開票)。「艦載機移転ノー」を訴える井原氏に対し、移転推進の福田良彦氏(自民党前衆院議員)の公約は「国のいいなりではなく、住民の立場で安全安心な生活環境を整える」(法定ビラ)。しかし「岩国再生!」(同)の公約には米軍優先、住民犠牲のプランが埋め込まれています。(山本眞直)


 「福田私案はなぜか封印されている」と地元マスコミ関係者はいいます。

 私案とは、福田氏が現職の衆院議員だった二〇〇六年九月十二日に記者会見で発表した「岩国基地再編に関する地域振興策」のことです。

 振興策の“目玉”は、基地に隣接する住民を「集団移転」させ、跡地に、空母艦載機部隊の米軍住宅(家族用四百七十二戸、単身者用千六百四十戸)を建設する構想。集団移転させるのはJR岩国駅に隣接する市街地ながら米海兵隊岩国基地に近く、爆音被害に苦しむ同市車町三丁目一帯です。

ビラでは触れず

 住民の移転先は、同基地から西へ約一キロにある愛宕山。

 移転構想に「とんでもないことだ。誰もそんなこと望んでいない」(予定地の町会役員)と住民は強く反発したしろものです。

 福田氏は、市長選の出馬表明会見でも「愛宕山への集団移転も考慮している」と発言していますが、法定ビラでは私案にはふれていません。

 しかし福田氏は昨年十一月、移転予定地で町会役員を対象に説明会をもちかけるなど、動いていました。

 「『私案を書いたのはおれだ』と言う人物がいる。岩国出身のコンサルタント会社のM氏ですよ」と話すのは福田氏に詳しい関係者。

 M氏は本紙の取材に「地域振興策を示すことで(米軍再編での)こう着状況を打開する一石になればと話し合ってきた」と福田氏との“共同作業”であることを認めています。

自民幹部の名も

 建設業界に詳しい保守系の元有力議員はこう証言します。

 「滑走路沖合移転や艦載機移転の施設整備、民間空港再開事業、集団移転や米軍住宅建設となれば数千億円から一兆円規模の利権が生まれる。防衛庁長官経験者や防衛利権に強い自民党幹部の名も出ている」

 また、岩国市商工会議所会頭の経験をもつ会社社長は「米軍や政府と現実的な対応ができる福田氏なら(米軍再編がらみの)再開発や基盤整備ができる」と言います。

 米軍再編計画を日米でまとめた額賀福志郎防衛庁長官(当時、現財務相)から衆院予算委員会で「(米軍再編など)地元に対しいろいろと説明いただき…心から感謝を申し上げている」と評価された福田氏が、「しっかり地元でも説明していきたい」と表明したのは、〇六年三月一日のことです。

 米軍再編の最終合意(同年五月一日)からわずか四カ月で「振興策」をまとめた福田氏の「岩国再生!」の本当の姿が透けて見えます。


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