2008年2月1日(金)「しんぶん赤旗」

中国ギョーザ中毒 被害拡大

輸入食品検査10%

残留農薬 加工品手付かず


 中国製冷凍ギョーザによる中毒事件が消費者の不安を広げています。発覚から一夜明けた三十一日、各地の保健所などに冷凍食品を食べて体調不良を訴えた人が三十四都道府県で四百人を超えました。今回の事件の背景として、日本の貧弱な検疫体制を指摘する声が広がっています。


 問題の製品は、厚生労働省の検疫所で残留農薬検査を受けていなかったことがあきらかになっていますが、同省の残留農薬検査の実施計画(二〇〇七年度)で、年間二百万件近くある輸入食品などの届け出のうち、残留農薬の検査は約二万六千四百件にとどまっていることがわかりました。

 厚労省の食品安全部監視安全課によると、残留農薬検査の規制対象外だった加工食品や肉、魚などは、〇六年から残留農薬基準適用の対象とされました。

 しかし、輸入食品は、一九九五年の食品衛生法の規制緩和によって、検疫所の水際検疫が一部だけを抽出するモニタリング検査に変更された結果、検査が輸入食品全体の3―10%程度まで減らされています。

 そのために、輸入食品の検査件数はわずかです。〇七年度の残留農薬のモニタリング計画では、実施予定がもっとも多い成田空港の検疫所でも約五千三百件にすぎません。冷凍食品(肉類)や食肉製品などの「畜産加工食品」にたいする残留農薬検査の予定数はゼロとなっています。同課は「ギョーザのような加熱冷凍加工食品は対象としていなかった」と説明しています。

 全国約三十カ所の検疫所で検査をおこなう食品安全監視員も、わずか三百三十四人(〇七年度)で、急増する輸入冷凍食品の検査率アップに必要な体制になっていません。

 せっかく加工食品などが残留農薬基準の適用対象になったのに、輸入検査の不備が、使用禁止農薬「メタミドホス」による今回の中毒被害につながりました。

抜本的拡充整備を

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 紙智子参院議員(日本共産党国会議員団農水部会長)の話 厚生労働省が、重大な健康被害が出てから一カ月もたってようやく、冷凍ギョーザと同一の食品の輸入をみとめないよう検疫所に指示し、販売中止を指示したというのは、遅きに失します。輸入食品の検疫、安全チェック体制の欠陥があらわになりました。政府の責任は重大です。

 大量の輸入食品が国内に入っているにもかかわらず、輸入食品の一割しか検査しない体制が招いたものです。消費者が食べてしまったあとで農薬汚染が判明するという食品行政では、国民の健康・安全は守れません。

 輸入食品の検査率を引き上げ、食品衛生監視員を増やすなど検査体制を抜本的に拡充・整備することが必要です。政府の食料輸入依存政策のもと日本の食料の60%以上が海外からきています。食料自給率向上をはかることも、食品の安全確保のうえで重要です。


 検疫所のモニタリング検査 輸入食品などを検査するさい、検疫所に留め置かず輸入を認めた上で、一部だけを抽出しておこなう方法。検査結果が出るのは、消費者が食品を食べてしまったあとになり、違反食品の流通を事前に防止することができません。


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