2008年1月29日(火)「しんぶん赤旗」

ドイツ 2州議会選挙

メルケル与党、後退

左翼党が躍進 初議席


 ドイツのヘッセン州(人口約六百十万人)とニーダーザクセン州(人口約七百九十万人)の二つの州で州議会選挙の投開票が二十七日行われ、メルケル首相の与党、キリスト教民主同盟(CDU)が両州ともに後退しました。特にヘッセン州では州政府の維持が危ぶまれる事実上の敗北に追い込まれました。左翼党は、得票率が5%以上なければ議席を得られない条項を乗り越え、両州で初めて議席を獲得しました。左翼党が選挙で旧西独部の州議会に議席を獲得したのは昨年五月のブレーメン市(州と同格)に次いで三州目です。


地図

 今回の州議選は二〇〇九年秋に予定される連邦議会選挙までの最大の地方選挙。国政で社会民主党(SPD)と連立を組んでいるメルケル首相は、連邦議会選挙までの一年半余り難しい政権運営を迫られそうです。

 ニーダーザクセン州の暫定開票結果では、CDUが得票率で前回より5・8ポイント減らしたものの42・5%を維持し、0・1ポイント減で8・2%の自由民主党(FDP)との州政府連立維持が確実になりました。SPDは3・1ポイント減の30・3%、90年連合・緑の党は8・0%。左翼党は前回より6・6ポイント増の7・1%と大躍進を果たしました。

 ヘッセン州の暫定結果ではSPDが前回より7・6ポイント伸ばし得票率36・7%となり、前回より12ポイントも減らしたCDUの36・8%と並びました。FDPは1・5ポイント増の9・4%、緑の党は2・6ポイント減の7・5%。左翼党は5・1%(前回立候補せず)を得ました。

 ドイツの州議会選挙は小選挙区比例代表併用制で行われ、全議席は最終的に比例投票での得票率により比例配分されます。


「全域に影響」 左翼党議員団長

 ドイツの左翼党の連邦議会議員団長のギジ氏は、ヘッセン州とニーダーザクセン州での初の議席獲得を受けて二十七日夜、ベルリンで「根強い反共主義を破った」と語りました。

 ギジ団長は、民主的社会主義党時代に旧西独地域で足場を築けなかったことを振り返り、「われわれはもはや旧東独地域だけの党ではない」と述べ、ドイツ全域に影響を広げていることを強調しました。

 同氏は「この影響はドイツだけにとどまらず、欧州全域にまで広がる」と欧州左翼党の核となっている同党の躍進の影響を指摘しました。

 ギジ団長はSPDとの協調について、SPDが構造改革路線「アジェンダ二〇一〇」や労働市場改革政策「ハルツIV」(長期失業者の失業扶助給付の引き下げ政策)などを根本的に変えることを条件に、「将来的には協力できる。そうすればドイツの新しいプロジェクトが開けてくる」と語りました。


 左翼党 二〇〇六年六月、旧東独政権党の流れをくむ民主的社会主義党(PDS)と旧西独部の労働組合活動家やSPD元党員らが結成した「労働と社会的公正のための選挙代案」(WASG)が合同して結成。党員数は現在、旧東独地域で五万人、旧西独地域で二万人。旧西独地域での党員を当面、三万人に増やすなどの党勢拡大の目標を掲げています。


解説

社会的公正に期待

 ドイツ連邦議会選挙を一年半余り後に控えて行われた二州議選には、最大の中間選挙として各党が総力を挙げました。昨年来、国政の争点として浮上してきた法定最低賃金確立などの「社会的公正」の問題が州議選でも一大争点となりました。

 ドイツでは約八十万人の派遣労働者や月四百ユーロ(約五万五千円)以下の収入しかない「ミニジョブ」労働者など不安定雇用が増加。長期失業者も「一ユーロジョブ」といわれる低賃金労働への就労を押しつけられています。

 正規雇用の労働者は社会保険費や税金、インフレを考慮すると「二十年前と給与が変わらない」(ビルト紙)一方で、経営者の数千万ユーロ単位の年収が大きな問題となっていました。

 社会民主党(SPD)は「州議会選挙を法定最低賃金制を導入する住民投票にしよう」と呼びかけ、最低賃金制の確立を求める街頭署名活動を積極的に展開しました。

 キリスト教民主同盟(CDU)は、「社会的公正」への対応が二州で割れました。ニーダーザクセン州のウルフ首相は最低賃金制度に理解を表明しました。ヘッセン州のコッホ首相は、移民犯罪者への刑罰強化を主張し、「社会的公正」にはほとんど触れずじまいでした。この差が選挙結果の違いになったと指摘されています。

 左翼党は最低賃金制を二〇〇五年の連邦議会選挙から争点としており、弱者の声を代表する党として支持を集め、「社会的公正」実現への努力を有権者から託された結果といえます。(片岡正明)


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