2008年1月26日(土)「しんぶん赤旗」

上信越道“手抜き”工事

トンネル厚不足 安全上の大問題

告発したら解雇 復帰へ頑張る

元現場監督語る


 上信越自動車道の熊坂トンネル(長野県中野市)工事で“手抜き”工事が発覚しました。その実態を下請け業者轟組の元現場監督(46)が二十五日、本紙に証言しました。元現場監督は告発したことで自宅待機を命じられ退職にまで追い込まれました。トンネルマンの譲れぬ思いは―。


 トンネル工事にとってトンネルの厚み=巻厚(まきあつ)は命です。だから正規の寸法(三百ミリ)よりマイナスは許されない。くるいがあればトンネルを壊し山をたたいて、広げて直すのが当たり前です。どこの現場でもやっていました。

 山は生きもの。トンネルは余裕をみていても掘ると外圧で小さくなる。だから巻厚のマイナスは絶対にありえない。

 二十五年間、トンネルマンとして、青森から沖縄まで二十数本のトンネルをつくってきました。こんないいかげんな工事は初めてです。

最大10センチ

 コンクリートは十メートルの作業区ごとに打ちます。その前の型枠段階で、巻厚があるか検査を受けます。二〇〇六年九月にコンクリート打ちが始まりますが、驚いたことにその時すでに巻厚が足りませんでした。

 「これは最初から何かがおかしい」と、ほかのメンバーと、測量しなおしました。元請けさん(ピーエス三菱と北野建設)は嫌な顔をしていましたけどね。

 東日本高速道路の二十四日の発表では、「二カ所で最大一・七センチ薄くなっていた」といいますが全然違います。ぼくらの測量では、四十―五十カ所で厚みが足りなく、最大十センチ足りないところもありました。安全上の大問題だと思います。

 検査は、東日本高速道路が委託したコンサルタント会社の監査員が実施します。監査員には型枠を下げたり、左右に動かして巻厚があるように見せるから検査は通るんです。

 でも監査員が帰ると「悪いな。型枠をあげてくれ」と元請けの人にいわれる。作業員にとっては二度手間。「給料二回分くれ」といわれなだめるのが大変でした。

 発表で「型枠がずれた」といっていますが、型枠が「ずれる」ことはなく、検査が通るように「うそ」の設定をしていたのです。

 私が勤める轟組東京支店の専務や支店長に現地に来てもらい、元請けにやり直しを強く頼みました。専務らも「これじゃだめだ」といって是正を求めましたが「工期が迫っている」などの理由で黙殺されました。

 それどころか工事関係者が、相次ぎ異動や退職に追い込まれました。

 昨年の九月、元請けに直接、訴えました。「考えさせてくれ」といわれましたが自宅待機を指示され、その後、解雇されました。

建交労だけが

 妻(42)に自宅待機になったと、いえませんでした。「現場が変わった」と伝え、妻のつくった、おにぎりをもって出かけていました。

 大学一年の娘と高校二年の息子がいます。妻は「どうしてこの時期に告発なんか。黙って働いていればよかったのに」といい、ノイローゼになりました。

 メディア二社に訴えましたが、取り上げてもらえませんでした。全日本建設交運一般労組(建交労)だけが「相談に来てください」といってくれました。職場復帰のために轟組と団交もし、妻を励ましに自宅まで通ってもらいました。路頭に迷うところでした。職場復帰まで頑張ります。


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