2008年1月23日(水)「しんぶん赤旗」

特権官僚制を温存

天上がり自由化

公務員「改革」素案


 政府の「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」(座長・岡村正東芝会長)で二十二日、ひと握りの特権的官僚の育成などを盛り込んだ最終報告書の素案が提示されました。

 「政権党に奉仕する公務員」をつくるため、総理大臣を支える「国家戦略スタッフ」や大臣を補佐する「政務専門官」を新設するなど、各省の官僚の上に立つ新たな「内閣官僚」をつくります。

 採用試験で将来の処遇まで決まる特権的な現行のキャリア制度は、「総合職」「一般職」「専門職」に再編。管理職の半数は「総合職」から任用するとして、特権官僚制度を温存しています。

 陳情など国会議員との接触については、原案にあった「原則禁止」は削除したものの、大臣の許可なしには認めません。

 「すべての公務員が民間企業の業務と倫理を学ぶ」として、すべての公務員を民間企業に出向させ、管理職の半分は民間企業などから採用するなど、もうけ優先の民間企業の論理を行政に持ち込み、官民癒着の「天下り・天上がり」を自由化する内容になっています。

 任用や給与に能力・成果主義を導入し、「行政効果」など政権党の政策を実行してどれだけ成果をあげたかで評価。昇給については二十年で停止とするなど、公務労働者の生活を脅かす内容を盛り込んでいます。

 一方で、ILO(国際労働機関)から勧告も受けた労働基本権(団結権、団体交渉権、争議権)については、労働協約締結権だけを付与するとした政府の専門調査会報告を「尊重する」としただけで、争議権や消防職員などの団結権については言及していません。

 懇談会は三十一日に最終報告をまとめます。


解説

「全体の奉仕者」変質狙う

 報告書素案は、「全体の奉仕者」である公務員を、時の政権党と財界の奉仕者に変質させようとするものです。

 公務員制度の改革というなら、特権的な官僚制度をなくし、住民と国民の目線にたって働くことができるようにすることが求められています。ところが、特権的なキャリア制度は、「総合職」などと看板を架け替えただけで温存。「国家戦略スタッフ」「政務専門官」など省庁の上に立つ新たな「内閣官僚」をつくることまで掲げています。

 すべての公務員を民間企業に出向させ、管理職の半分は企業などから採用するとしたことも見逃せません。

 営利目的の企業の業務や論理を行政に持ちこむことは、すべての国民に対して公正・中立で民主的な運営が求められる行政をゆがめるものです。

 政府与党は昨年、官民癒着の「天下り・天上がり」の自由化法案を強行しましたが、これでは腐敗や不正がいっそうはびこることになりかねません。

 昇給・昇格に能力・成果主義を導入し、「行政効果」など政権党の政策を実行して、どれだけ成果をあげたかで評価することも大問題です。これでは公務員の目線は、国民ではなく政権党にばかり向くことになり、「ヒラメのような公務員」にさせられかねません。

 政治家と公務員の接触に規制を加えることも、不当な介入を防ぐためではなく、国民から選ばれた国会議員による追及を逃れて、公務員を政権党の都合のいい働き手に変えようというねらいから出てきたものです。

 一方で、ILO勧告も受けた労働基本権は、政府の調査会が付与するとした労働協約権さえ明示していません。

 労働基本権を付与することは、自らの労働条件は自ら決めるという働くルールを確立するだけでなく、公共サービス切り捨てや癒着・腐敗など行政のゆがみをチェックし、ただしていく力となるものであり、全面的な付与が求められます。

 まるで財界による「行政の乗っ取り」とも呼ぶべき報告書素案は、全面的に見直す以外にありません。(深山直人)


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