2007年12月31日(月)「しんぶん赤旗」

北朝鮮問題

福田首相のジレンマ


 「いまが交渉のチャンス」と対北朝鮮外交に意気込みを示した福田康夫首相。しかし、北朝鮮と関係改善を急ぐアメリカと安倍晋三前政権の「負の遺産」の間で板ばさみ状態です。

 十八日、自民党外交調査会「朝鮮半島問題小委員会」が初会合をもちました。委員長は福田首相の側近、衛藤征士郎元防衛庁長官。役員の一人は、「福田首相の北朝鮮外交を側面支援するのがねらい。しかし対話路線を推進するのは容易なことではない」といいます。

 その福田内閣は十月、北朝鮮籍船の入港禁止や物品の輸入禁止措置の半年延長を決めました。安倍前政権が発動した制裁措置を、そのまま継続したもの。安倍前政権の強硬路線は根強く、自民党に依拠する福田首相がリーダーシップをとる姿勢は見えません。

 アメリカとのあつれきも福田首相の対応を難しくしているといわれます。

 「北朝鮮に見返りは与えない」としていたブッシュ政権が路線を百八十度転換しました。ブッシュ大統領が金正日総書記に親書を送り、アメリカのニューヨーク・フィルの平壌公演も決定。北朝鮮の「テロ支援国家」指定解除も迫りつつあります。

 しかし、日本政府にとっては拉致問題を解決するという「一つの大きなてこ」(高村正彦外相)を失うことになるだけに、「同盟国日本を置き去りにするのか」と反発を強めました。

 日本政府は、アメリカの核問題への対応にも不満を募らせてきました。「完全かつ検証可能な不可逆の核廃棄」といいながら、北朝鮮に次々と譲歩している、等々。安倍前政権は水面下で、激しくヒル国務次官補・ブッシュ政権批判を繰り返してきました。

 「同盟関係の基盤は揺るがないにしても、日米間の乖離(かいり)が心配だ」(元駐米大使)という事態です。アメリカ側も、シーファー大使らが、拉致問題を考慮せずに解除すると、日米同盟に否定的な影響を与えると、公言するにいたりました。

 福田首相はブッシュ大統領との日米首脳会談で、安倍前首相とは違って、テロ支援国家指定解除に反対しませんでした。逆に、それを機に、政策転換したい考えと見られています。

 しかし、ブッシュ政権が指定解除すれば、「アメリカに注文をつけられない福田首相の弱腰と批判が起きることは避けられない」(小委員会役員)。

 朝鮮半島の平和体制構築へ進みつつあるなか、福田首相は北朝鮮問題にどう対応するのか。自民党外交部会幹部はこういいます。「福田首相は北朝鮮問題で国民への強いメッセージも対北朝鮮政策もいまだ示すことができないでいる」



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