2007年12月24日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

ごみ有料化 乱暴です


 各地で、ごみの処理問題が課題になっています。「ごみの減量」を理由の一つにあげて、家庭ごみ収集を有料にする自治体が増えています。住民の声に反して有料にして一年余りの京都市と、有料実施を住民の強い批判で延期した岩手県北上市からのリポートを紹介します。


広がった市民的議論

減量に企業の責任問う声

京都市

 京都市では、十二年におよぶ現市政のもとで三百五十八億円もの市民負担増が行われ、その一環として昨年十月、家庭ごみ有料化が強行されました。家庭ごみ袋は四十五リットル袋の場合は一枚四十五円(一リットル一円)、資源ごみ袋はその半額での有料化となりました。

売り上げ22億円

 市は年間で、ごみ袋二十二億円分を売り上げ、十三億円の収益を見込んでいます。「有料化ではなく、まず他都市並みにまともな分別収集をすべきだ」という市民の声は黙殺され、「ごみ減量」を口実に強行されました。

 市民の強い怒りにさらされた自民・公明・民主・無所属のオール与党は動揺し、有料化にあたって十三項目の付帯決議をつける「異例の対応」に追い込まれました。

 有料化から一年がたちました。「ごみ袋が高いから、足でぎゅうぎゅう詰めにして、ごみを出している」「スーパー店頭にトレーを返している」「ごみはそんなに減っていない」というのが市民の実感です。

 市は、家庭ごみ16%減量、資源ごみ21%減量と発表しましたが、市民一人当たり一日約八十五グラム減量という水準にとどまります。新聞紙一部を古紙回収に出せば百四十グラム減量、ペットボトル(五百ミリリットル)をスーパー店頭に戻すと三十グラム減量ということを考えると、民間資源回収ルートに、ごみが流れたと考えるのが自然です。実際、スーパー店頭回収は数倍、古紙回収業者の取り扱う古紙の量は一割増加しています。

 つまり、「有料化」できびしい家計をむち打たなくても、市職員が市民と一緒に汗をかき「分別」を徹底すれば十分達成できた「効果」だったわけです。しかも、京都市は「ごみを減らす」と言いながら、「ごみが減らない」という前提で、焼却灰溶融炉という新たなゴミ処理施設を建設中です。建設費総額約二百億円。運転・維持だけでも年間十八億円、人件費はさらに数億円以上かかります。有料化で得た収益は瞬く間に消えてなくなる乱暴な税金の使い方です。

出し方が話題に

 また、同時に、分別の徹底だけで問題解決するとは思っていません。実際、京都市でも今年十月からプラスチック製容器包装の分別収集が本格的に始まりました。

 有料化の時は「ごみの出し方」が話題になりましたが、分別の拡大の場合には「ごみの成分」に関心が集まり、その分、ごみそのものをどう減らすのか立ち入った市民的な議論が始まりました。「ごみが発生してから対処するのではなく、商品をつくる前の段階からの手立てが必要」という議論におのずと向かいます。

 そうした議論の中で、廃棄物の収集まで企業が責任をおってこそ「ごみの発生しにくい社会」にできると拡大生産者責任を求める声が強まっています。

 有料化などという乱暴な手法ではゴミ問題は解決しない。市民的なゴミ談義を各地に広げ、国の廃棄物行政そのものの転換を迫る世論を作ることが何よりも大切だと、幅広い市民の皆さんとの共同を広げているところです。(冨樫豊・京都市議)

反対運動で先送り

処理料上乗せ中止へさらに

岩手・北上市

 家庭ごみの収集有料化を岩手県内で初めて打ち出した北上市(人口九万四千人)で、有料化に反対する「くらしと環境を考える市民の会」(平田幸一代表)が呼びかけた請願署名が反響を広げています。住民の批判を受けて、市は実施の延期を余儀なくされました。

市民負担は変だ

 「『ごみ処理費用は、ごみを出す市民が負担するべきだ』という考えは、おかしい。私たちは、いまでも税金をいっぱい取られている。市は、それを振り向けてほしい」。地域で十五人から署名を集めた五十九歳の女性は切々と訴えます。

 市は八月二日の議会全員協議会で、家庭ごみ有料化を十二月議会に提案し、来年七月から実施する基本方針を発表。市民は八月三日付の地元紙を見て初めて知りました。

 「有料化方針は突然だった。専任指導員の配置や『市民会議』の設置など、これまで市と住民が行ってきた、ごみ減量化の努力にも水を差すものだ」。市民の会に参加する日本共産党の鈴木健二郎市議は怒ります。

 市が示したのは、現在使われている指定ごみ袋代に処理手数料を上乗せする方式です。「大」十二・五円(四十リットル)を五・八倍の七十三円(四十リットル)に値上げするなど、市民の負担を増大させる内容でした。

 市が開催した住民説明会やパブリックコメント(公募意見)で寄せられた意見は四百五十五人に達しましたが、「ごみの減量にはつながらない」「実施時期が早すぎる」などの疑問や不安の声が続出しました。

 市民の会は十月下旬から、有料化中止を求める請願署名を開始。街頭宣伝では、「石油高騰で生活物資も値上がりし、くらしが大変だ。ごみ収集は無料のままにして」などの声とともに、七時間で四百三十人から賛同を得たこともありました。署名は短期間で四千人を突破しました。

今も署名送られ

 こうしたなか、市は十一月五日の議会全員協議会で、有料化の提案を来年六月議会に、実施を同十二月に先送りし、ごみ袋「大」(四十リットル)の値上げを六十三円に変更するなどの見直し案を出しました。

 市民の会の平田代表は「世論と運動が有料化の実施を延期させた」と力を込めます。市民の会は署名用紙とビラを全戸配布しましたが、問い合わせ先の平田さんの自宅には、いまも住民から署名入りの封書が返送されてきています。

 市は十二月十六日までに、見直し案の住民説明会を各地で開きました。参加した先述の五十九歳の女性は「見直し案も負担増では変わりがないと思った。何とか中止させたい」と話します。

 市民の会は、来年六月議会に向けて請願署名をさらに集めるとともに、来年三月の市議選の大きな争点にしようと、予定立候補者らに公開質問状を提出する予定です。(岩手県・三国大助)


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